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受注設計生産型製造業における改革方向

はじめに - 受注設計生産型製造業の課題

受注設計生産型商品は、一般的に標準部と顧客要望に対応した都度設計対応部の混在したユニット構成となっています。しかし企業によっては、都度対応の範囲の違いや、その規定さえも不明確なままで設計者任せになっている企業もあります。このような受注対応をどれだけきちんと管理するかで、儲けが大きく変わります。一般的な問題点を羅列してみると以下のような共通した問題を抱えています。

1.顧客ニーズ対応を重視することにより、プロジェクト毎の管理になってしまい、プロジェクト間のつながりが弱く、標準化が遅れがちになる。プロジェクト毎、セイバン毎の管理のために、個別最適の追求活動になりがちである。

⇒標準化が進まなく、購買、生産における量の拡大によるモノコストの追求が弱い。
⇒設計負荷集中による設計効率向上ができず、設計品質問題等の問題が発生する。
⇒サービス部品等の集約化が出来づらい。

2.過去実績を有効活用できず、またコストテーブル等の整備が間に合わないため、見積精度が低く、利益管理が弱くなりがちである。全ての活動が終わらないと、損益が確定しない。

3.設計と並行する原価管理活動(目標実行予算管理)がしづらい。過去実績をそのまま使用できないため、見積期間、見積精度が向上しない。

⇒受注競争力の向上が進まない。
⇒継続的なコストダウンが出来づらい。

4.設計計画が不十分で、設計者の負荷管理、納期管理が出来ない。また品質面の管理が不十分になると、成果自体が見えなくなる。

これらの問題に対しては、まず基本的な考え方を明確にし、その上で個別判断、対応が出来るようにすべきです。
基本的考え方をより具体的に述べたいと思います。


1.事業遂行上の立脚点

1.事業として大きな成果を得ることを目指して、もの・プロセス・情報を対象に、競合優位性向上と社内業務効率化を目指した標準化の姿を明確にするとともに、総合力発揮ができるように業務プロセスの連携・強化が大切です。組織はえてして個別最適を追求しがちであり、組織間に負の力として発生してしまわないように配慮すべきです。

2.製造業は技術の強みを持って顧客満足と競合優位性を確保しています。ただ受注設計型企業には、「度が過ぎる」ことが多く、「自社は顧客の言う通り設計したことで顧客満足を得ている」と発言される企業が多く見受けられます。その結果、技術の先進性の追求ではなく、個別対応技術(付加価値の低い作業の増大)が多くなり、利益が出しずらくなっている場合があります。  顧客対応を考えた標準化は、先回りして顧客の活用企画を行なって、必要な種類の標準品に盛り込むことと定義すべきでしょう。

3.製品開発の採算性管理を考えた標準化企画が行なわれないと投資回収が出来なくなります。受注設計型企業では、回収機会が少ないため、特に意識して投資回収評価を基本にした新商品開発、個別対応、ライフサイクルマネージメントが重要になります。

4.標準化が遅れたままでCADやPDMの導入をしても大きな成果は出せません。この当たり前のことがおろそかになっている企業が多く、ITに対し、「魔法の杖」的な期待が強すぎる企業もあります。商品モデル、技術モデル、業務モデル、ITモデルのバランスこそが重要です。

5.「様々な投資をしたが利益につながらない等々」多くの悩みがあるが、それらは一言で言うと「マネージメントの責任」である。マネージメントとは利益を出すための機能である。上記の観点を配慮した活動企画が重要です。

事業遂行上の立脚点


2.受注設計型企業における付加価値創出業務とは、顧客の立場で企画すること

受注設計生産型製造業が顧客も自社もすり合わせ型になるのは、各々の業務プロセスに起因します。
顧客は主として生産技術部門であり、その先のユーザの要望対応を行い、設備メーカーはその顧客の要望に対応して行くプロセスであるからです。受身的な対応をしている限りは、すり合わせが限りなく広がります。

設備ユーザーは、新工場建設やライン増設等の際に、自社の製品仕様を基本に、いくらでどのように製造するかの個別検討を行う。これはその製造業の生産技術部門中心で企画される。その中で、図の右のように生産プロセス、作業方法、物流方法、情報システムとのかかわりとバランスを持って、必要な設備に対する機能。条件を設定していく。
これが発注仕様書として設備メーカにーに引合として示される。これを受けた段階では、企画が終っており標準を提案するには遅すぎる。
これを解決するには、早い段階で情報を得て、ユーザー検討に入ることが望まれる。また事前にユーザーが標準カタログ等を前提に企画してくれるような事前の提案を行なう必要がる。
残念ながらそのタイミングを逸した場合は、逆提案の形で提案することになる。これは技術、価格的な優位性を必要とする。
このような営業は、ユーザーの生産技術者の絶大な信頼を得る技術レベルを必要とし、受身型の営業ではなく、技術力をもった営業であるべきで、コンサルティングセールスとは、このような営業スタイルをいいます。受注設計型で儲けるには、このように業務の役割が大きく変わると認識すべきです。

受注設計型企業における付加価値創出業務


3.標準化の追求を市場、商品、製品、購買、生産、営業を通して実施する

受注設計生産型製造業で事前の準備を怠ると、迅速な顧客対応が出来ません。事前準備とは、市場を基本に営業体制、商品体制を整備し、それを効率よく対応する製品体系を用意することです。さらに購買、生産のSCM対応も考えた事前準備を行なうことです。

標準化の追求を市場、商品、製品、購買、生産、営業を通して実施する

市場からみて準備するものと、購買・生産から準備していくものの双方からの整備ができれば、受注対応を迅速に行なうことが出来ます。よくみる失敗は、片方からのみの検討で満足している場合であり、そのときには何らかの問題を発生しています。このように見ると複数の部門をまたがった、モデルの姿であり、そのために部門間をまたがった部品表のあり方が重要となり、部品表を核にして、この管理を行なうのが部門間協業を実現する方法です。
この例では、固定部と変動部を明確にし、オプション部と受注対応部で幅広い対応を可能にすることを目指しています。
このように事前に準備したものを、受注の都度認識し、大きく外れないようにしながら、受注対応を行なうのが良いでしょう。
またこの受注対応方法は、営業のメンバーが認識しておき、お客様の接点での対応方法まで整備しておくべきです。


4.事業全体を支える部品表整備で、全部門にメリットを出させる

受注に対して、事前に準備した部品表に連携して、設計管理と購買・生産活動をコンカレントに実施し、迅速に生産につなげる活動が求められます。部品表は生産管理のためだけではなく、商品企画や設計管理さらにコンカレントのために整備すると定義し、全部門の参加を義務付け、かつ全部門に有効になるように作りこむべきです。

事業全体を支える部品表整備で、全部門にメリットを出させる

受注設計型製造業では、受注の都度設計し部品表を整備する業界です。従って速く、効率よく部品表を整備することが重要です。設計・設計管理・技術管理・見積・コスト管理・購買管理・生産準備等を並行して作るしくみを整備すべきです。
これを迅速に整備できるように部品表に様々な情報をリンクさせて準備しておくことが必要になります。その上で営業活動と対応して部品表を迅速につくり、それに沿って各業務をコンカレントにできるようにマネージメントすべきです。
まとめると設計段階から部品表を整備し、それを迅速に生産部品表へつなげ、発注、生産、納期管理、出荷につなぐこと。さらにアフターサービスの部品表までつなげ、設置済み設備の部品表としての整備も出来るようにすると部品表を核にした部門間連携が実現できます。
部品表整備とは、このような全体のビジネスに関わるプロセスとの関係で整備すべきです。


5.受注設計型企業での原価低減活動は、既存業務にコスト要素を盛り込む

原価の設定部門、発生部門を巻き込んだ活動とし、全員がコストを基準に業務を行なえるようにすることが受注設計生産型企業の原価管理の姿です。(活動と原価管理のしくみへの配慮)

受注設計型企業での原価低減活動

受注設計型製造業での原価管理は、全ての業務プロセスでの原価管理が必要です。開発とコストダウンを切り離しては実施できないため、設計の際、調達・生産の準備の段階で、目標原価の実現を果たさなければなりません。よって通常の業務機能に加えて、常にコストの管理が出来るようにすべきで、全てのメンバーが、コスト見積、コスト評価ができることが最低限望まれます。その上で、幅広い情報を収集、発想して、世界一の原価の実現への挑戦が必要になります。原価管理とは、そのような各部門の活動とリンクしつつ目標原価設定、進捗管理、各種原価低減支援を行ないつつ、結果を出す部門です。組織的には、部門間を貫く串刺し機能を持ちます。別の言い方をするとプロジェクト的な意味合いを持った部門であり、部門長への強権を持たなければ出来ない部門です。原価管理部門を中心にしてトータル原価管理を実現していきましょう。


6. 受注設計型企業での利益確保は準備、営業段階から始まる

個別顧客対応の際には、事前に標準モデルを準備し、それを基本に営業用資料を整備し、提案型営業へ移行し、標準モデルをベースに、顧客要件を把握し、提案書を速く、精度良く作成し、受注に結びつける連携と迅速なマネージメントが重要です。

受注設計型企業での利益確保は準備、営業段階から始まる

受注設計型製造業では、事前に準備した情報で、ターゲットの市場への提案が出来なければならなりません。説得営業です。その段階で、設計上の必要な条件を早く決めてくる機能が求められます。
その条件を決めるためにも、個別対応要望に対する設計としての対応性と見積の迅速化が求められます。
仕様が決まれば、流用範囲と新規設計範囲を明確化し、設計管理を行い納期どおり設計を完了させます。
並行して調達、生産準備を行い、納期どおり製品を納める。トータルのマネージメントを成功させるために、プロジェクト管理も必要になります。

日本の受注設計型製造業では、技術の強みが盛んに言われますが、管理力の強みも世界に冠たるものがあります。ただあまりにも複雑なものが多く、個人の技に依存する領域もおおくなり、儲かりずらい代表選手になっています。その改革の切り口は、全体最適、一気通貫であり、方針に沿った組織総合力の発揮であります。「理屈は分るが難しい」のも事実で、それだけ少しづつの意識の統一、しくみの整備、実践活動こそが成果につながります。
そのための一助になれればと考えております。



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経営コンサルティング企業として、日本におけるSCM改革をリーディングしております。
また最近では、「X-Chain Mangement(エックスチェーンマネジメント)」という新しい経営手法を開発して、お客様の事業の成功に貢献しております。

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