本店戦略中心の中央集権か、支店戦略重視の地方分権か
特集『本店と支店の関係を最適化して、不況を乗り切る!』
金融危機に端を発した世界同時不況が日本の製造業を直撃していますが、この状況をチャンスと変えるためには、組織を越えて、社内の英知を結集して、総力で立ち向かう必要があります。営業、技術、生産、サービスなど
の機能別の組織を越えた議論も必要ですし、本店(あるいは本社)と支店・営業所が組織や地理的距離を越えて、知恵を出し合う場も設定すべきです。
本店は支店横断で比較することできますのでそこからの情報を持ち寄り、支店は販売の現場であるので、日々培っている知恵を出して、それらを融合させれば、他社にない新たなビジネスを企画できることでしょう。本店と支店が協力すれば、業務オペレーションのコストをもっと削減できるアイディアが出るかもしれません。
今回の特集では、本店と支店がお互いに協力し合って、現在の経営危機に挑んで企業が再び活性化するためにはどうすべきかに焦点を当てて、ヒントをお届けしたと思います。
本店と支店のそれぞれの責任・権限分担の考え方から初めて、より具体的に本店と支店がどう協力し合うかに関して、提起していきたいと思います。
具体的には、以下のような3回の連載をお届け致します。

1.はじめに
多くの業種・業界で、国内外の各地に支店を設置している企業は多いのではないでしょうか。その目的は色々あるでしょうが、一番は顧客と密接な関係を構築し、機動的にビジネス活動を実施することではないでしょうか。ですから、支店に設置される部門としては、顧客との関わりの多い営業部門やサービス部門が一般的ではないかと思います。顧客が比較的限定的である産業財ビジネスよりも、顧客が不特定多数の一般消費財ビジネスの方が支店数は多く、支店の人員も多いのではないでしょうか。
このように顧客密着型の経営方針の下、支店を設置していくと、本店と支店の間のコミュニケーションが必要になります。そして、このコミュニケーションがうまくいかないと問題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。ここでは、本店・支店の組織構成、かつ支店内に営業とサービスなど複数の業務機能が存在する場合において、どんな問題が発生するのか、それをどう解決すべきかを考察してみたいと思います。

2.本店・支店の組織構成における問題点
まず、本店と支店の間に発生する問題点、及びその問題が発生するメカニズムを明確にしたいと思います。
第一に思い浮かぶのは、本店・支店間のコミュニケーションの悪さではないでしょうか。本店は全社のことを考慮して、営業戦略などを立案しますが、それを支店では実行していないことがよくあります。
この原因の一つとして、本店が資料などを支店に送付するだけで、十分なコミュニケーションを取っておらず、本店の意図が支店側で理解されていないことが挙げられます。これ以外にも、支店が十分理解していても、支店のエリア特性にマッチしていないために、実行していないという場合もあります。当然、全支店が満足する営業戦略など到底無理なのですから、仕方のないことです。問題は、営業戦略と各支店の立てるエリア戦略をどこで、どう整合させるかです。

次に浮かぶ問題点はなんでしょうか。組織の縦割りによる弊害が多いように思います。例えば、支店に営業部門とサービス部門が存在する場合、営業部門には本店の営業部門から、またサービス部門には本店のサービス部門から、それぞれ別々の指示が来ることが多いのではないでしょうか。それぞれの指示が齟齬を起こしていることもあり、支店では混乱が発生します。コンサル現場でよくお聞きするのは、本店の営業部門とサービス部門がそれぞれ似たような実績データを要求しているにも関わらず、フォーマットが違うという場合です。支店では大きな負荷がかかります。これは、支店内の各部門が連携していれば負荷も低減できるのかもしれませんが、やはり本店内の各部門が連携して、「支店全体最適化」の観点を持つべきではないでしょうか。

三つ目の問題点は、メーカー系企業において発生するもので、しかも本店というより工場と支店との間の問題です。前提としては、一つの工場が複数の支店の案件を対応し、支店がそれ以外の営業や設計、あるいは工場で生産された製品の据付工事を対応するという状況です。このとき、工場の原価管理はライン別、商品別の管理である一方、支店は案件別の管理で、不整合が起きています。工事に必要な特殊部材を支店が購入していることありますが、このような不整合がある場合、工場と支店のどちらで対応した方が本当はコスト最小なのか判断することは容易ではありません。

●本店・支店間のコミュニケーションの悪さ
→ (原因1)本店の説明不十分(※支店が多いため、不十分になりがち)
→ (原因2)支店のエリア戦略と異なる本店の営業戦略の通知
●組織の縦割りの弊害
→ (原因1)"本店内"、及び"支店内"の部門横断の連携不足
→ (原因2)本店の情報発信における「支店全体最適化」の観点の不足
●原価管理の不整合(※メーカー系企業対象で、工場と支店の間)
→ (原因1)工場では役割分担化されているために、案件単位より商品単位・ライン単位の管理が容易
→ (原因2)工場でこなす案件数が多いために、商品単位・ライン単位の管理が容易
3.本店支店間の問題点の解決策
それでは、上述の問題点をどう解決すればよいのでしょうか。リストアップした3つの問題点ごとに考察してみたいと思います。
まず1点目の「本店・支店間のコミュニケーションの悪さ」に関してですが、これは問題点ではなく、事業を運営上の制約と捉えるべきではないでしょうか。当然、最低限のコミュニケーションのインフラなり、ルールは必要でしょうが、コミュニケーションを良くしようとしても徒労に終わるように思います。
むしろコミュニケーションを極力取らなくていいように、支店に任せて、地方分権化した方がいいのではないかと思います。なぜならば、販売の現場は支店にあり、支店の方がニーズにマッチした事業運営が可能であると考えるからです。それでは本店は何をすべきでしょうか。業績のよい支店のやり方を横展開する支援をしたり、各支店では資金不足でできない広告宣伝の戦略を立案したり、実行したりといった活動などではないかと考えます。

次に、「組織の縦割りの弊害」の解決策に関してですが、部門横断の組織、あるいは複数部門が議論する場の設定がカギになると考えます。しかも、本店側と支店側のそれぞれに設置することが重要です。さらに、これまでの経験から、部門横断の組織を作るだけでなく、複数部門が議論する場の設定の両方をも併用する方がいいように思います。なぜならば、またそこに部門の壁が出来てしまうからです。組織を作ったときは、その組織が議論の場の運営役として機能することになると考えています。人員の少ない支店では、複数部門が議論する場だけでも十分機能するのではないでしょうか。そのような場で部門を跨る課題を発見し、関係者を集めてプロジェクトを結成し、ファシリテーターとして運営を行うことになるでしょう。ここでもうひとつ重要なことは、本店の部門横断の仕組みと支店の部門横断の仕組みがコミュニケーションを取ることです。支店内が混乱しないためにも、本店は支店全体最適化の観点から検討した上で、情報を伝達するべきです。これを可能にするために、本店内に部門横断の仕組みが必要なのです。

最後に、「原価管理の不整合」の解決策に関してですが、これは難しい問題です。工場は、大量の案件を纏めて、役割を細分化することでコスト低減を狙っている一方、支店は案件ごとに個人が担当し、徹底したコスト管理を行うことでコスト低減を実現しています。標準原価型管理の工場と実際原価型管理の支店の混在とも言い換えられます。支店側からみた解決策は、工場の標準原価と支店の部品購入価格を比較することでしょう。しかし、工場側も改善を重ねて標準原価が低減されることもありますし、各支店の購入を纏めると支店ごとに買うより安くなるかもしれません。これに関しては、定期的(半期ごと、四半期ごと)に実績データを基に工場と支店のどちらで購入すべきかを分析するしかないでしょう。そのために、分析する仕組みを作り、それを実行する組織を工場に設置することが必要ではないでしょうか。

問題点の解決策をまとめると以下のようになります。

4.最後に
今回のテーマである「本店戦略中心の中央集権か、支店戦略重視の地方分権か」に関して、「支店戦略重視の地方分権」が基本とすると考えます。なぜならば、販売の現場は支店にあり、かつ支店ごとに地域特性が異なるので、支店が戦略を立案するべきであると考えるからです。一方で支店ではできず、本店にしかできないところもあります。例えば、ブランド戦略や新商品開発戦略などの立案、あるいは業績のよい支店のやり方を特定して、横展開する活動などは支店では不可能です。もっとも業種・業界、あるいは企業によって、どこまで支店に権限委譲するかは異なることでしょう。本店と支店がコミュニケーションを繰り返しながら、試行錯誤しながら支店の権限委譲の範囲を最適化するべきでしょう。
本店と支店の役割・責任分担を最適化することが、売上最大化、及びコスト最小化を実現する一つの手段として、参考になれば幸いです。

関連商品: 事業構造改革」コンサルティング
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC02.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048/016/
困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html
コンサルティングのお問い合わせ先:
bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください
金融危機に端を発した世界同時不況が日本の製造業を直撃していますが、この状況をチャンスと変えるためには、組織を越えて、社内の英知を結集して、総力で立ち向かう必要があります。営業、技術、生産、サービスなど
の機能別の組織を越えた議論も必要ですし、本店(あるいは本社)と支店・営業所が組織や地理的距離を越えて、知恵を出し合う場も設定すべきです。
本店は支店横断で比較することできますのでそこからの情報を持ち寄り、支店は販売の現場であるので、日々培っている知恵を出して、それらを融合させれば、他社にない新たなビジネスを企画できることでしょう。本店と支店が協力すれば、業務オペレーションのコストをもっと削減できるアイディアが出るかもしれません。
今回の特集では、本店と支店がお互いに協力し合って、現在の経営危機に挑んで企業が再び活性化するためにはどうすべきかに焦点を当てて、ヒントをお届けしたと思います。
本店と支店のそれぞれの責任・権限分担の考え方から初めて、より具体的に本店と支店がどう協力し合うかに関して、提起していきたいと思います。
具体的には、以下のような3回の連載をお届け致します。

1.はじめに
多くの業種・業界で、国内外の各地に支店を設置している企業は多いのではないでしょうか。その目的は色々あるでしょうが、一番は顧客と密接な関係を構築し、機動的にビジネス活動を実施することではないでしょうか。ですから、支店に設置される部門としては、顧客との関わりの多い営業部門やサービス部門が一般的ではないかと思います。顧客が比較的限定的である産業財ビジネスよりも、顧客が不特定多数の一般消費財ビジネスの方が支店数は多く、支店の人員も多いのではないでしょうか。
このように顧客密着型の経営方針の下、支店を設置していくと、本店と支店の間のコミュニケーションが必要になります。そして、このコミュニケーションがうまくいかないと問題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。ここでは、本店・支店の組織構成、かつ支店内に営業とサービスなど複数の業務機能が存在する場合において、どんな問題が発生するのか、それをどう解決すべきかを考察してみたいと思います。

2.本店・支店の組織構成における問題点
まず、本店と支店の間に発生する問題点、及びその問題が発生するメカニズムを明確にしたいと思います。
第一に思い浮かぶのは、本店・支店間のコミュニケーションの悪さではないでしょうか。本店は全社のことを考慮して、営業戦略などを立案しますが、それを支店では実行していないことがよくあります。
この原因の一つとして、本店が資料などを支店に送付するだけで、十分なコミュニケーションを取っておらず、本店の意図が支店側で理解されていないことが挙げられます。これ以外にも、支店が十分理解していても、支店のエリア特性にマッチしていないために、実行していないという場合もあります。当然、全支店が満足する営業戦略など到底無理なのですから、仕方のないことです。問題は、営業戦略と各支店の立てるエリア戦略をどこで、どう整合させるかです。

次に浮かぶ問題点はなんでしょうか。組織の縦割りによる弊害が多いように思います。例えば、支店に営業部門とサービス部門が存在する場合、営業部門には本店の営業部門から、またサービス部門には本店のサービス部門から、それぞれ別々の指示が来ることが多いのではないでしょうか。それぞれの指示が齟齬を起こしていることもあり、支店では混乱が発生します。コンサル現場でよくお聞きするのは、本店の営業部門とサービス部門がそれぞれ似たような実績データを要求しているにも関わらず、フォーマットが違うという場合です。支店では大きな負荷がかかります。これは、支店内の各部門が連携していれば負荷も低減できるのかもしれませんが、やはり本店内の各部門が連携して、「支店全体最適化」の観点を持つべきではないでしょうか。

三つ目の問題点は、メーカー系企業において発生するもので、しかも本店というより工場と支店との間の問題です。前提としては、一つの工場が複数の支店の案件を対応し、支店がそれ以外の営業や設計、あるいは工場で生産された製品の据付工事を対応するという状況です。このとき、工場の原価管理はライン別、商品別の管理である一方、支店は案件別の管理で、不整合が起きています。工事に必要な特殊部材を支店が購入していることありますが、このような不整合がある場合、工場と支店のどちらで対応した方が本当はコスト最小なのか判断することは容易ではありません。

●本店・支店間のコミュニケーションの悪さ
→ (原因1)本店の説明不十分(※支店が多いため、不十分になりがち)
→ (原因2)支店のエリア戦略と異なる本店の営業戦略の通知
●組織の縦割りの弊害
→ (原因1)"本店内"、及び"支店内"の部門横断の連携不足
→ (原因2)本店の情報発信における「支店全体最適化」の観点の不足
●原価管理の不整合(※メーカー系企業対象で、工場と支店の間)
→ (原因1)工場では役割分担化されているために、案件単位より商品単位・ライン単位の管理が容易
→ (原因2)工場でこなす案件数が多いために、商品単位・ライン単位の管理が容易
3.本店支店間の問題点の解決策
それでは、上述の問題点をどう解決すればよいのでしょうか。リストアップした3つの問題点ごとに考察してみたいと思います。
まず1点目の「本店・支店間のコミュニケーションの悪さ」に関してですが、これは問題点ではなく、事業を運営上の制約と捉えるべきではないでしょうか。当然、最低限のコミュニケーションのインフラなり、ルールは必要でしょうが、コミュニケーションを良くしようとしても徒労に終わるように思います。
むしろコミュニケーションを極力取らなくていいように、支店に任せて、地方分権化した方がいいのではないかと思います。なぜならば、販売の現場は支店にあり、支店の方がニーズにマッチした事業運営が可能であると考えるからです。それでは本店は何をすべきでしょうか。業績のよい支店のやり方を横展開する支援をしたり、各支店では資金不足でできない広告宣伝の戦略を立案したり、実行したりといった活動などではないかと考えます。

次に、「組織の縦割りの弊害」の解決策に関してですが、部門横断の組織、あるいは複数部門が議論する場の設定がカギになると考えます。しかも、本店側と支店側のそれぞれに設置することが重要です。さらに、これまでの経験から、部門横断の組織を作るだけでなく、複数部門が議論する場の設定の両方をも併用する方がいいように思います。なぜならば、またそこに部門の壁が出来てしまうからです。組織を作ったときは、その組織が議論の場の運営役として機能することになると考えています。人員の少ない支店では、複数部門が議論する場だけでも十分機能するのではないでしょうか。そのような場で部門を跨る課題を発見し、関係者を集めてプロジェクトを結成し、ファシリテーターとして運営を行うことになるでしょう。ここでもうひとつ重要なことは、本店の部門横断の仕組みと支店の部門横断の仕組みがコミュニケーションを取ることです。支店内が混乱しないためにも、本店は支店全体最適化の観点から検討した上で、情報を伝達するべきです。これを可能にするために、本店内に部門横断の仕組みが必要なのです。

最後に、「原価管理の不整合」の解決策に関してですが、これは難しい問題です。工場は、大量の案件を纏めて、役割を細分化することでコスト低減を狙っている一方、支店は案件ごとに個人が担当し、徹底したコスト管理を行うことでコスト低減を実現しています。標準原価型管理の工場と実際原価型管理の支店の混在とも言い換えられます。支店側からみた解決策は、工場の標準原価と支店の部品購入価格を比較することでしょう。しかし、工場側も改善を重ねて標準原価が低減されることもありますし、各支店の購入を纏めると支店ごとに買うより安くなるかもしれません。これに関しては、定期的(半期ごと、四半期ごと)に実績データを基に工場と支店のどちらで購入すべきかを分析するしかないでしょう。そのために、分析する仕組みを作り、それを実行する組織を工場に設置することが必要ではないでしょうか。

問題点の解決策をまとめると以下のようになります。

4.最後に
今回のテーマである「本店戦略中心の中央集権か、支店戦略重視の地方分権か」に関して、「支店戦略重視の地方分権」が基本とすると考えます。なぜならば、販売の現場は支店にあり、かつ支店ごとに地域特性が異なるので、支店が戦略を立案するべきであると考えるからです。一方で支店ではできず、本店にしかできないところもあります。例えば、ブランド戦略や新商品開発戦略などの立案、あるいは業績のよい支店のやり方を特定して、横展開する活動などは支店では不可能です。もっとも業種・業界、あるいは企業によって、どこまで支店に権限委譲するかは異なることでしょう。本店と支店がコミュニケーションを繰り返しながら、試行錯誤しながら支店の権限委譲の範囲を最適化するべきでしょう。
本店と支店の役割・責任分担を最適化することが、売上最大化、及びコスト最小化を実現する一つの手段として、参考になれば幸いです。

関連商品: 事業構造改革」コンサルティング
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC02.pdf
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工場を全体俯瞰できる製造現場リーダーの要件と育成
1.製造現場リーダーの重要性
リーマンショックに端を発した100年に1度と言われる世界的な不況に製造業は苦しんでいます。
日本国内の製造業は、円高というダブルパンチを受けています。この危機的な状況を打破する方法の一つは現場力の向上ではないでしょうか。これまで世界戦略で拡大を続けてきたトヨタも、能力限界の生産で製造現場が傷んできたので、今一度、現場力の回復と向上に力を注ぎ始めています。
ここでは、現場力向上のキーマンとなる製造現場リーダーに焦点を当てて考察したいと思います。現状の製造現場の実態はどうなっていて、現場力を向上させるために、現場リーダーはどんな能力を持つべきか、またそのようなリーダーをどのように育成していくべきか考えてみたいと思います。
2.「製造現場リーダー」の定義
まず、ここで言う「製造現場リーダー」を定義しておきたいと思います。
『製造工程のある一部の工程の日々のオペレーション管理を受け持っていて、その工程の生産性を向上させる責任を負っている人』を現場リーダーと定義したいと思います。

3.現状の製造現場の実態
「製造現場リーダー」は担当している工程の生産性を向上させる責任があるので、その工程を分析・評価して、問題点を洗い出し、それを解決しようとします。このような手順で生産性が改善させることもあるでしょうが、工場全体でみると改善していない場合もあるのではないでしょうか。
なぜなら、材料・部品を調達してから、製造して、製品を出荷するまでの製造プロセスは繋がっているために、ある工程だけでは改善しない場合があるからです。例えば、担当工程の作業改善を行って、その工程の製造リードタイムを短縮化したとします。そのとき担当工程の仕掛在庫は減少するかも知れませんが、後工程の作業改善が行われていないと、仕掛在庫が後工程に移動しただけになります。これでは工場全体では何も解決していません。
このような、特定工程の部分最適化が必ずしも、工場全体の最適化に繋がるとは限らない例がよく見られます。
自工程だけでなく、他工程や工程間にも問題が潜んでおり、ある工程だけを見ていても真の解決は出来ないということではないでしょうか。これ以外にも、工場全体最適化視点を持つことで、各工程の生産性を部分最適化している時よりも大きく改善することも可能です。例えば、工程ごとのタクトタイム(製品1個生産するための時間)が均一化していない場合です。各工程を均一になるように、工程区分を見直せばボトルネックがなくなります。その結果、各工程の人員数も最適となり、必要人員も減少したり、仕掛在庫が工場全体で削減されたり、といったような効果が期待できます。
さらに、より大きな効果を出すためには、上流にさかのぼって製品設計や工程設計を改良することも必要です。しかし、なかなか開発部や生産技術部の人が新製品対応で忙しく、このような取り組みができていない製造業が多いのではないでしょうか。
これらをまとめると以下のようになります。



4.「製造現場リーダー」の要件
製造現場の実態、あるいは問題点が把握できたところで、これらの問題解決でキーマンとなる製造現場リーダーはどのような要件を満たす必要があるでしょうか。要件のポイントとしては、『工場全体を俯瞰』した上で、『担当している工程の工場内での位置付けを的確に捉え』、『工場全体最適化の観点から、担当工程の改善を実行』できる能力が求められると考えます。以降でさらに詳細に見てみましょう。
『工場全体を俯瞰』できるようになるためには、担当していない工程に関しても基礎的な知識があること、さらに欲を言えばその工程を自分の目で見たり、実際に経験したりしていることが要求されます。
『工場全体の中での担当工程の位置づけを把握』するためには、各工程の能力を数値的に捉えられていることが要求されます。供給リードタイムの観点から、担当工程は他工程に比較してタクトタイムが長いか、製造業務コストの観点から担当工程に掛けているコストは全工程の中で大きいのかどうか、品質の観点から不具合の多い工程の部類に担当工程が含まれているのか、などを把握するべきです。
『工場全体最適化の観点から担当工程の改善を実行』するためには、モノ及び業務の繋がりを把握して、実施した施策が前後の工程にどのような影響が出るかが予測できる能力が必要です。また、他の工程を担当している製造現場リーダーと一緒になって、工場の生産性を議論でき、それを最適化するアイディアを提案できる必要があります。さらには、製造現場で発生している問題を製造の問題か、設計の問題かを切り分けることができ、設計の問題の場合には、その関係者と議論できる能力が求められます。
「製造現場リーダー」の要件を整理すると、以下のようになります。


5.「製造現場リーダー」の育成
それでは次に、そのような「製造現場リーダー」をどのように育成すればよいのでしょうか。製造現場リーダーが要求される能力ごとに考察してみたいと思います。
まず、「工場全体を俯瞰できる能力」に関しては、集合研修などで生産の基礎的な知識を習得した上で、実際に工場内の全工程の製造作業を実際に経験する機会を工場として設定する必要があるでしょう。将来の工場の生産性向上のための投資として、工場の全社員は経験するべきではないでしょうか。
次に、「工場全体の中での担当工程の位置づけを把握する能力」に関しては、常に数値で工程なり、工場全体の生産性を把握する習慣を付けることではないでしょうか。会議等で各工程の生産性を比較し、生産性のいいところは何をしているのかを共有し合うことではないでしょうか。このときに、どのような実態に着目し、それをどう数値化したのか、そしてそこからどのように解決に至ったかを話し合うことがポイントではないかと考えます。
最後に、「工場全体最適化の観点から担当工程の改善を実行する能力」に関しては、上述の生産性の比較の中で、生産性の悪い工程も出てきます。その時に、その担当者を攻めるのではなく、工程ごとの特性を全員が理解した上で、工場全体の問題として全員で意見を出し合う文化を築くことではないでしょうか。
議論するときに、工場幹部の役割が重要になると考えます。担当する工程のやり方を押しつけたりするのではなく、「工場内のすべての工程は繋がっている」という観点から、製造現場リーダーがアイディアを出し合うように誘導するのが、工場幹部の役割ではないでしょうか。このような文化を醸成できれば、工場全体俯瞰の能力も実践を通じて向上していきます。
「製造現場リーダー」の育成のポイントを整理すると、以下のようになります。


6.最後に
1)サプライチェーン全体最適化の視点
ここまでは、自社の工場内の全体最適化の観点から改善できる「製造現場リーダー」に関して考察してきましたが、実は製品供給プロセスは、サプライヤから工場に繋がり、さらに工場から販社を通じて顧客に繋がっています。所謂「サプライチェーン」という視野で捉えた全体最適化も考えられます。工程の部分最適化だけでなく、工場全体最適化の観点がより大きな効果をもたらすのと同様に、サプライチェーン全体最適化の観点を持てば、さらに大きな効果を期待できます。このような「サプライチェーン全体最適化」の観点は、部長以上の工場幹部だけでなく、課長クラスも持つことが望ましいと考えます。
製造現場リーダーが、「工場全体最適化」を日々考え抜き、課長クラスが、「サプライチェーン全体最適化」を検討し続ければ、QCDにおいて他社を圧倒する企業に成長できるものと信じています。
最後に、工場幹部のすべきことですが、サプライチェーン上流のマーケティング領域や製品開発領域、逆に下流のサービス領域などを含めた「事業全体最適化」の観点から企業の成長を考えることではないでしょうか。

2)サプライチェーン全体最適化の視点
弊社は、事業を仕事の繋がりと捉えるプロセス視点から、「Xチェーン・マネジメント(XCM)」という新しい経営管理手法を開発し、「Xチェーン経営」(http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.html)という本を出版しております。この手法では事業を「デマンドチェーン(マーケティング・営業領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義し、それらの繋がりに着目しています。これらが、競争力のある企業への脱皮のヒントになれば幸いです。

関連商品: 「 ビジネスプロセス改革」コンサルティング
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC03.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048/017/
困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html
コンサルティングのお問い合わせ先:
bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください
リーマンショックに端を発した100年に1度と言われる世界的な不況に製造業は苦しんでいます。
日本国内の製造業は、円高というダブルパンチを受けています。この危機的な状況を打破する方法の一つは現場力の向上ではないでしょうか。これまで世界戦略で拡大を続けてきたトヨタも、能力限界の生産で製造現場が傷んできたので、今一度、現場力の回復と向上に力を注ぎ始めています。
ここでは、現場力向上のキーマンとなる製造現場リーダーに焦点を当てて考察したいと思います。現状の製造現場の実態はどうなっていて、現場力を向上させるために、現場リーダーはどんな能力を持つべきか、またそのようなリーダーをどのように育成していくべきか考えてみたいと思います。
2.「製造現場リーダー」の定義
まず、ここで言う「製造現場リーダー」を定義しておきたいと思います。
『製造工程のある一部の工程の日々のオペレーション管理を受け持っていて、その工程の生産性を向上させる責任を負っている人』を現場リーダーと定義したいと思います。

3.現状の製造現場の実態
「製造現場リーダー」は担当している工程の生産性を向上させる責任があるので、その工程を分析・評価して、問題点を洗い出し、それを解決しようとします。このような手順で生産性が改善させることもあるでしょうが、工場全体でみると改善していない場合もあるのではないでしょうか。
なぜなら、材料・部品を調達してから、製造して、製品を出荷するまでの製造プロセスは繋がっているために、ある工程だけでは改善しない場合があるからです。例えば、担当工程の作業改善を行って、その工程の製造リードタイムを短縮化したとします。そのとき担当工程の仕掛在庫は減少するかも知れませんが、後工程の作業改善が行われていないと、仕掛在庫が後工程に移動しただけになります。これでは工場全体では何も解決していません。
このような、特定工程の部分最適化が必ずしも、工場全体の最適化に繋がるとは限らない例がよく見られます。
自工程だけでなく、他工程や工程間にも問題が潜んでおり、ある工程だけを見ていても真の解決は出来ないということではないでしょうか。これ以外にも、工場全体最適化視点を持つことで、各工程の生産性を部分最適化している時よりも大きく改善することも可能です。例えば、工程ごとのタクトタイム(製品1個生産するための時間)が均一化していない場合です。各工程を均一になるように、工程区分を見直せばボトルネックがなくなります。その結果、各工程の人員数も最適となり、必要人員も減少したり、仕掛在庫が工場全体で削減されたり、といったような効果が期待できます。
さらに、より大きな効果を出すためには、上流にさかのぼって製品設計や工程設計を改良することも必要です。しかし、なかなか開発部や生産技術部の人が新製品対応で忙しく、このような取り組みができていない製造業が多いのではないでしょうか。
これらをまとめると以下のようになります。



4.「製造現場リーダー」の要件
製造現場の実態、あるいは問題点が把握できたところで、これらの問題解決でキーマンとなる製造現場リーダーはどのような要件を満たす必要があるでしょうか。要件のポイントとしては、『工場全体を俯瞰』した上で、『担当している工程の工場内での位置付けを的確に捉え』、『工場全体最適化の観点から、担当工程の改善を実行』できる能力が求められると考えます。以降でさらに詳細に見てみましょう。
『工場全体を俯瞰』できるようになるためには、担当していない工程に関しても基礎的な知識があること、さらに欲を言えばその工程を自分の目で見たり、実際に経験したりしていることが要求されます。
『工場全体の中での担当工程の位置づけを把握』するためには、各工程の能力を数値的に捉えられていることが要求されます。供給リードタイムの観点から、担当工程は他工程に比較してタクトタイムが長いか、製造業務コストの観点から担当工程に掛けているコストは全工程の中で大きいのかどうか、品質の観点から不具合の多い工程の部類に担当工程が含まれているのか、などを把握するべきです。
『工場全体最適化の観点から担当工程の改善を実行』するためには、モノ及び業務の繋がりを把握して、実施した施策が前後の工程にどのような影響が出るかが予測できる能力が必要です。また、他の工程を担当している製造現場リーダーと一緒になって、工場の生産性を議論でき、それを最適化するアイディアを提案できる必要があります。さらには、製造現場で発生している問題を製造の問題か、設計の問題かを切り分けることができ、設計の問題の場合には、その関係者と議論できる能力が求められます。
「製造現場リーダー」の要件を整理すると、以下のようになります。


5.「製造現場リーダー」の育成
それでは次に、そのような「製造現場リーダー」をどのように育成すればよいのでしょうか。製造現場リーダーが要求される能力ごとに考察してみたいと思います。
まず、「工場全体を俯瞰できる能力」に関しては、集合研修などで生産の基礎的な知識を習得した上で、実際に工場内の全工程の製造作業を実際に経験する機会を工場として設定する必要があるでしょう。将来の工場の生産性向上のための投資として、工場の全社員は経験するべきではないでしょうか。
次に、「工場全体の中での担当工程の位置づけを把握する能力」に関しては、常に数値で工程なり、工場全体の生産性を把握する習慣を付けることではないでしょうか。会議等で各工程の生産性を比較し、生産性のいいところは何をしているのかを共有し合うことではないでしょうか。このときに、どのような実態に着目し、それをどう数値化したのか、そしてそこからどのように解決に至ったかを話し合うことがポイントではないかと考えます。
最後に、「工場全体最適化の観点から担当工程の改善を実行する能力」に関しては、上述の生産性の比較の中で、生産性の悪い工程も出てきます。その時に、その担当者を攻めるのではなく、工程ごとの特性を全員が理解した上で、工場全体の問題として全員で意見を出し合う文化を築くことではないでしょうか。
議論するときに、工場幹部の役割が重要になると考えます。担当する工程のやり方を押しつけたりするのではなく、「工場内のすべての工程は繋がっている」という観点から、製造現場リーダーがアイディアを出し合うように誘導するのが、工場幹部の役割ではないでしょうか。このような文化を醸成できれば、工場全体俯瞰の能力も実践を通じて向上していきます。
「製造現場リーダー」の育成のポイントを整理すると、以下のようになります。


6.最後に
1)サプライチェーン全体最適化の視点
ここまでは、自社の工場内の全体最適化の観点から改善できる「製造現場リーダー」に関して考察してきましたが、実は製品供給プロセスは、サプライヤから工場に繋がり、さらに工場から販社を通じて顧客に繋がっています。所謂「サプライチェーン」という視野で捉えた全体最適化も考えられます。工程の部分最適化だけでなく、工場全体最適化の観点がより大きな効果をもたらすのと同様に、サプライチェーン全体最適化の観点を持てば、さらに大きな効果を期待できます。このような「サプライチェーン全体最適化」の観点は、部長以上の工場幹部だけでなく、課長クラスも持つことが望ましいと考えます。
製造現場リーダーが、「工場全体最適化」を日々考え抜き、課長クラスが、「サプライチェーン全体最適化」を検討し続ければ、QCDにおいて他社を圧倒する企業に成長できるものと信じています。
最後に、工場幹部のすべきことですが、サプライチェーン上流のマーケティング領域や製品開発領域、逆に下流のサービス領域などを含めた「事業全体最適化」の観点から企業の成長を考えることではないでしょうか。

2)サプライチェーン全体最適化の視点
弊社は、事業を仕事の繋がりと捉えるプロセス視点から、「Xチェーン・マネジメント(XCM)」という新しい経営管理手法を開発し、「Xチェーン経営」(http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.html)という本を出版しております。この手法では事業を「デマンドチェーン(マーケティング・営業領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義し、それらの繋がりに着目しています。これらが、競争力のある企業への脱皮のヒントになれば幸いです。

関連商品: 「 ビジネスプロセス改革」コンサルティング
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