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需要予測ソフト有効活用のポイント

0.はじめに

 需要予測ソフトは使えないということをよく聞きますが本当にそうでしょうか?
 需要予測とは本来どういうもので、どのようなことができ、どのようなことができないのかを見極めないまま、活用しようとしていないでしょうか?
 本ブログでは、そもそも需要予測とはどのようなものであるか、どこまでできるのかを整理したうえで、需要予測ソフト活用のポイントを紹介し、既に眠っている、また、これから購入される需要予測ソフトを有効にご活用いただくための一助となればと思い筆をとりました(キーボードを叩きました)。
 ※本ブログでの需要予測は数学的な需要予測のことであり、いつ人類が滅亡するのかなどの将来を予想するといった予測とは異なります。

1.需要予測とは何か

 需要予測は、“占い”とは違い何もないところから将来を予測することができません。
 ここでは、基本的な需要予測方法を整理してみたいと思います。
 基本的な需要予測方法は、3つあります(多数ある需要予測ロジックも元をたどればこの3つに集約されていると思います)。
 1つ目は、予測対象の過去の実績をもとに、ある数式を作成し、その数式に従って将来発生する値を予測するもっとも一般的な方法です。この予測方法の特徴は、予測するために数式を作成するため、過去の実績を活用することで簡単に予測と実績との差異が分かり、この予測手法が当たりそうかどうか判定できます。しかしながら、過去の実績をもとに数式を作成しているので、過去と同じ環境変化の仕方ではなく、急激な変化する場合、簡単に予測は外れてしまいます。また、過去の実績の中に解読不明なイレギュラー値が多ければ(取り除く等対応ができれば別ですが)、予測精度が低下するのも自明であります。
 2つ目は、予測対象の過去の実績をもとに、将来発生する頻度や数量を確率的に予測する方法です。例えば、先々月は10個売り上げているが、先月、今月は1個も売れていない、来月は何個売れるだろうかを予測する際に、過去の実績から5個以上売れる確率は10%しかないという予測になるとすると、欠品率を10%に抑えればよい場合、4個在庫を持っておこうということになります。たまにしか売れないような間歇需要の製品の在庫数量算定に有効です。
 最後は、予測対象とは別のものの実績を先行指標として活用し、将来を予測する方法です。予測で活用する先行指標として有名なのが住宅着工件数で、これをもとに住宅建材や内装などの需要予測を行います。市場の傾向は読め、今回の金融危機などの影響も読むことはできますが、予測したい企業や商品のシェアの推移が一定であることなどの状態でなければ、予測精度は落ちてしまいます。また、適切な先行指標があれば非常に有効ですが、これを見つけることも簡単ではありません。
 以上3つの基本的な需要予測方法をご紹介しましたが、「需要予測とは過去の実績を活用し、将来を予測するものであり、何らかの過去実績がなければできない。また、過去の実績と同様な環境の変化がなければ、予測精度は低下する。」と定義することができます。

図1 基本的な需要予測方法と特徴

2.需要予測ソフト有効活用のポイント

 1で需要予測ソフトの限界がみえ、何でもかんでも期待すべきではないことがはっきりお分かりになったと思います。予測精度ばかり議論しているようでは、需要予測ソフトは有効に活用できません。実は、需要予測ソフトとして世の中に出ているものは、同じような需要予測ロジックを採用していますので、予測精度は大きく変わらないようです。(※なかには、間歇需要予測(1の2つ目の基本的な予測方法)がない需要予測ソフトもありますので、購入される場合はご注意を!)従いまして、需要予測ソフトを選ぶときは、機能や使い勝手の良さを重視して購入されることをお勧めします。それよりも重要なことは、どのように活用するかで、私がこれまで経験したコンサルティングで得た需要予測における()需要予測ソフト有効活用のポイントは以下の3つとなります。
 ①実需に近い実績を活用
 ②業務の標準化
 ③見える化
 ブルウィップ効果(図2)と呼ばれる現象があります。例えば、消費者が3個購入した結果を受けて、小売が次は5個売れるだろうと予測して卸に5個発注する。卸は、5個受注したので、次は7個売れるだろうと考え7個発注し、というように恣意的な思惑が入り込み現実からどんどん離れてしまい、結局在庫が膨らんでしまいます。実需から遠ざかれば遠ざかるほど、現実からかけ離れた予測を行いうことになりますので、実需に近い実績を活用することがポイントとなります。
※需要予測ソフトは、製品の需要予測だけではなく、修理問合せ件数実績から要員配置を設定することも可能です。思ってもみない使い道があるかもしれません。

図2 ブルウィップ効果

 また、予測業務は、KKD(勘・経験・度胸)で行われていることが多く、熟練した担当者と経験の浅い担当者のレベル差は大きく、誰でもできない業務と化して、技能継承が問題となっているところもあります。暗黙知を形式知化し、需要予測は誰でも同じパフォーマンスを発揮できるように、また、需要予測が少しぐらい外れても問題のないような仕組みを検討することに時間を費やし(予測精度を上げることも必要ではあるが、100%的中することはないので、予測精度向上にばかり検討時間を割くことは有効ではありません)、そして、標準化することが重要となります。
※予測自体はシステムに任せ、人は需要予測ソフトで予測した結果や環境の変化への対応や意思決定等付加価値の高い業務に専念させることが重要です。

 最後に、需要予測ソフトで算定した予測結果は、予算(売上計画)から割り当てた販売計画とは異なり客観的数値として取り扱うことができます。例えば、予測結果と売上計画のギャップ(図3)は何らかの手を打たなければ売上計画は達成しないことが分かり、予測結果と実績とのギャップ(図4)は商品の競争力が落ちている、市場が縮小しているという警鐘を鳴らしていることが分かります。予測結果を数値で把握するだけではなく、このように見える化することで、問題を顕在化させることができます。需要を予測するだけにとどまらず、マネジメントツールとして活用することも可能となります。単に需要予測ソフトの導入よりも大きな結果を得られることでしょう。

図3 需要予測結果とその読み取り例①

図4 需要予測結果とその読み取り例②

 需要予測ソフトが既に眠っている方は、以上の3つのポイントが適用しているかをお考えいただき需要予測ソフトの再活用を、また、これから購入される方々は、3つのポイントを考慮し、需要予測ソフトの導入をご検討いただければ幸いです。

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【theme : 経営コンサルタント
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雑誌記事から浮き彫りになるビジネス成功の戦略とは

1.取り上げる雑誌記事の紹介

リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに、世界的に経営危機状態に陥ると、注目企業のこれまでの事業方針が妥当だったのかどうかを評価する記事が多くなります。ここでは、以下の3つの記事を取り上げて、ビジネスを継続的に成功に導くためには、何に気を付け、どんな戦略を立案すべきかを浮き彫りにしたいと思います。これまでのコンサル経験も踏まえて、考察も加えていきたいと思います。

①月刊「BOSS」4月号(2009) 特集 ゴーン10年「10の真実」(P.11~31)
http://keieijuku.net/boss_backnumber.html
②週刊ダイヤモンド 2009/02/21 特集 「電機」全滅! (P.30~65)
http://dw.diamond.ne.jp/contents/2009/0221/index.html
③日経ビジネス 2009年4月6日号 特集 トヨタの自戒 (P.18~34)
http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbse/back/20090406.html

取り上げる雑誌記事

取り上げる雑誌記事の表紙

景気が芳しくない今は、現在のビジネスを見直すとともに、将来の成長に向けて、準備するのは絶好のタイミングではないでしょうか。上記3つの記事の分析が、そのヒントになれば幸いです。

2.日産自動車のゴーン改革から学ぶ

= 記事の概要 =
記事の冒頭を少し要約すると、次のようになります。
ちょうど10年前に来日したゴーンは、「コミットメント」「取引先集約」「コストカッター」などの流行語とともに、瀕死の重態だった日産自動車を、またたくまに高収益企業へと蘇らせた。こうして、ゴーンは日産を変えたのみならず、日本企業の経営そのものを変えていった。その結果ゴーンは現代の「経営の神様」として崇め奉られるようになる。
ところが今期、日産は再び赤字に転落する。ゴーンにしてみれば屈辱的な数である。いったい、ゴーンは何を見損じ、どこで躓いたのか。10の視点から検証した。
以下に、検証の10項目に対するそれぞれの見出しだけを拾い上げます。

日産自動車の記事の目次

= 記事からの読み取り =
「コストカッター」と呼ばれるゴーンは、「日産リバイバルプラン」を策定し、取引先の見直しなどにより経費削減を実現させました。その結果、収益力を向上させ、企業を健全化させました。経費削減の有効な手段して、クロス・ファンクショナル・チームによる改革活動(日産V-upプログラム)も根付かせました。
「日産リバイバルプラン」に続く「日産180」や「日産バリューアップ」では売上増目標も掲げて、売上拡大による収益力向上も開始しました。残念ながら、デザイン重視の販売戦略は奏功せず、世界同時不況の煽りを受けて、目標を達成できない状況です。
しかし、ここから以下の3点を学ぶことができるのではないでしょうか。
日産自動車の記事からの読み取り

コスト削減の目的は利益を獲得することで、利益を獲得する目的は将来成長すること(売上を拡大すること)であることを考えると、コスト削減策から売上拡大策までを一連のストーリーで描くことは当然のことではないでしょうか。

事業立て直し一連のストーリー

3.電機業界の混乱から学ぶ

= 記事の概要 =
記事の冒頭の一部を抜粋すると、次のようになります。
経験したことのない急激かつ大幅な売り上げの落ち込みが続いている。コモディティ化の荒波は、半導体メモリだけでなく、「主力」に掲げる薄型テレビをも容赦なくのみ込む。
業績をかさ上げした円安も、今は昔だ。決算の着地は逃げ水のごとく、下方修正した翌日から予想を超えて赤字幅が拡大していく。もはや先送りは、許されない。
身を切るような、しかし本質的な構造改革を、社員の希望を失わずに実行できる企業は、どこか。
見出しから目次を作成すると、以下のような構成になっています。

電機業界の記事の目次

= 記事からの読み取り =
この記事で、特に印象に残ったことは、以下の3点です。
①サムソンが半導体分野で顧客ニーズの低価格に集中投資して利益を出していること
②薄型テレビがコモディティ化して、米ヴィジオが水平分業のビジネスモデル確立したこと
③パナソニックが連結売上高に占める新規事業の構成比を40~50%に増加させると宣言したこと
これらから以下の3点を学ぶことができるのではないでしょうか。
電機業界の記事の読み取り

製品ライフサイクルが徐々に短期化し続ける現代では、過去の成功体験に捕らわれず、顧客ニーズ動向の変化を、即座に事業戦略に反映する仕組み作りが必要不可欠なのではないでしょうか。

利益拡大のストーリー

4.トヨタ自動車の世界戦略から学ぶ

= 記事の概要 =
記事の冒頭を抜粋すると、次のようになります。
「世界最強」から「赤字企業」に転落するトヨタ自動車。
業績不振の原因は、外部環境の悪化だけではない。足元をどう見つめ直し、再建に取り組もうとしているのか。日本、米国の現場を取材し、その動きをリポートする。
見出しから目次を作成すると、以下のような構成になっています。
トヨタ自動車の記事の目次

= 記事からの読み取り =
この記事で、特に印象に残ったことは、以下の3点です。
①急激な世界展開により人材育成が追従できていないが、不況の今が人材強化のチャンスと捉えていること
②米国市場偏重によるマーケティング力の低下あるいは顧客志向の希薄化が発生したこと
その一つ対策として、ニーズ動向に応じて、機動的にモデルチェンジし、商品を育成していること
③過去に捕らわれず、商業施設での展示販売「露天販売」により、販売チャンスを獲得していること
トヨタ自動車からは、以下の3点を学ぶことができるのではないでしょうか。
トヨタ自動車の記事の読み取り

世界最強のトヨタですら、これまで見えていなかった課題が露呈しているが、それでもそれをきちんと明確にし、今がチャンスという逆転の発想で地道に取り組むことが、トヨタの強さの秘訣ではないでしょうか。

ニーズ検証のストーリー

5.ビジネス成功の戦略(総括)

これら3つの記事から読み取った内容には、共通のものもあれば、独自のものもあります。ここで総括すると、以下のようなテーマが見えて来るのではないでしょうか。

ビジネス成功の戦略

全ての企業に当てはまるわけではないと思いますが、不況を乗り切るヒントになれば幸いです。

6.最後に

話は変わりますが、弊社では「Xチェーン経営」(http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.html)という本を出版しております。この本の中では事業は「デマンドチェーン(マーケティング領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給領域)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義し、それらの繋がりに着目して、経営を管理する新しい手法を紹介しています。
今回の3つの記事のほとんどが一般消費財であり、マーケティングを基に自社で商品仕様を決定しなければならなりませんでした。そのため、成功の秘訣も「デマンドチェーン」や「エンジニアリングチェーン」に適用することが多い結果となりました。しかし、半導体業界などの産業財ビジネスでは、「サプライチェーン」や「サービスチェーン」にも成功の秘訣が潜んでいます。
どちらのビジネスであれ、事業戦略の下、4つのチェーンを有機的に連携させることが成功のキーのひとつと考えています。


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Author:日本ビジネスクリエイト
経営改革、業務改革、現場改革、システム実現支援などの総合的なコンサルティングを提供しています。特に製造業の現場に精通したコンサルティングに強みを持ち、SCM/CVM領域でのパイオニアとして認知され、また公益事業向けコンサルティングにおいても実績があります。

経営コンサルティング企業として、日本におけるSCM改革をリーディングしております。
また最近では、「X-Chain Mangement(エックスチェーンマネジメント)」という新しい経営手法を開発して、お客様の事業の成功に貢献しております。

【ホームページ】: http://www.jbc-con.co.jp/

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