サプライヤとの協業範囲を広げてビジネスを成功させよう
1.サプライヤとメーカーの協業の必要性
毎日、電車に乗って通勤していますが、中吊り広告に自然と目がいくものです。そこで最近面白い広告を見かけました。大阪ガスのエネファーム(http://www.ene-farm.info/link/)の広告なのですが、半分はハウスメーカーの広告(1枚の中吊りに1社のハウスメーカーで、広告ごとにハウスメーカーが異なる広告)になっていました。エネファームは当然、住宅に付随して使用されるわけなので、エンドユーザーは住宅購入者です。そのエンドユーザーが集まる場のひとつである電車内に、ハウスメーカーと共にエネファームの使用イメージも含めて発信するという手法は斬新だと感じました。
そこで、サプライヤとメーカーとの協業のあり方を見直してみたいと思います。

2.サプライヤとメーカーの協業の歴史
※ここで、メーカーとは最終製品を作るセットメーカーのことで、サプライヤとは、その最終製品に必要な部品を生産するメーカーのことです。
そもそも、なぜサプライヤとメーカーが協業しなければならないのでしょうか。メーカーが部品から最終製品まですべて製造していた時代では、協業関係を構築する必要はありませんでした。しかし、顧客要求が高度化し、メーカー1社ですべての技術を開発するのは不可能になってきました。そこで、差別化要素にならない技術は、自社で開発することをやめて、要求仕様を満足する部品を購入して、それを活用することで補完し始めました。顧客要求の変動も激しく、開発サイクルが短期化したこともこれに拍車をかけています。
ただし、部品を購入するだけならば、協業関係まで構築する必要はありません。顧客要求がさらに高度化してしまい、メーカーの製品設計とサプライヤの部品設計とを擦り合わせないと実現できなくなってきたことが、協業を促したのではないでしょうか。一度外部化したにも関わらず、競合他社と差別化を図ろうとすると、内部化に迫られ、結果として協業という形に収まったと言えるのではないでしょうか。

3.昨今の協業の実態
協業の歴史からみえてきたように、現在の協業は、製品開発段階を中心に行われています。技術を外部化した後に、内部化しようとしているために、メーカーに技術がなくなっていることも影響していると思われます。メーカーに技術が残っていれば、サプライヤと共同開発する必要はなく、サプライヤに部品仕様を渡して、それを購入すればよいわけです。しかし、技術の進歩が早いために、メーカーがキャッチアップできなくなっている事実があるように思います。技術分野を絞り込んでいるがために、サプライヤの技術の方が先端を走っているということでしょう。メーカーは各サプライヤ技術を統合する技術、あるいは製品全体をうまく制御する技術
を中心に磨くことに集中するようになっているのではないでしょうか。
自動車業界において、このようなことが進んでいることを法政大学准教授の近能善範氏も以下のURLで述べられています。
※「進むサプライヤーの“絞込み”、中核的サプライヤーは10分の1の20社に」法政大学経営学部准教授 近能善範氏 http://e2a.jp/interview/080107.shtml

サプライヤの側から見直すと、製品開発プロジェクトに参画することで、早期に仕様を把握できるとともに、他社に対して、参入障壁を作りやすくなっています。製品開発プロジェクトに参画するためには、先端技術開発を継続的に蓄積して、競合他社以上の技術力を保有しなければなりません。

これまで見てきたように、サプライヤとメーカーの協業関係は、お互いにとってメリットのある体制であることが分かります。

4.これからの協業の動向
それではこれから、サプライヤとメーカーの協業関係はどう変わっていくのでしょうか。大きく2つの方向性があるのではないでしょうか。
一つ目の方向性は、冒頭に電車の中吊り広告のように、営業領域(販売や販促など)での協業関係です。サプライヤも最終製品が売れてこそ、儲かるわけですから、最終製品とともに自社製品を宣伝することは今後増えてくるのではないでしょうか。最終製品のコア部品を供給している力のあるサプライヤ(例えば、冒頭の事例の大阪ガスなど)は最終製品の販売でも協業することもあるかも知れません。
二つ目の方向性は、環境対応のための協業関係です。最終製品には、サプライヤの生産した部品が含まれていますので、環境に無害な最終製品を作るにはサプライヤの協力が欠かせません。一方、サプライヤにとっても、環境に無害に材料にするためには何かしらの仕様を達成できない可能性が出てきますので、メーカーとの仕様擦り合わせが必要になります。そのために、協業関係が必要になります。またリバース物流(製品の回収や改良、修理の流れ)の構築にも、サプライヤとの協業関係が必要不可欠です。

5.協業の広がり
最後に、協業の対象範囲を整理したいと思います。そこで弊社が提唱している「Xチェーン」(「Xチェーン経営」http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.htm)という枠組みを活用したいと思います。この枠組みでは事業は「デマンドチェーン(マーケティング・営業領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義しています。エンジニアリングチェーンで始まったサプライヤとメーカーの協業関係は、徐々にデマンドチェーンに広がりつつあります。また、「環境対応」をキーワードに、サプライチェーンの協業関係も重要になりつつあります。コア部品の技術が製品の性能に影響を与えることを考えると、サービスチェーンでもコア部品の技術を持つサプライヤと協業しないとメンテナンス・サービスも提供できない状況でしょう。
このように、製品開発領域で始まった協業関係は、事業全体に拡大しつつある実態が見えてきました。むしろ、今後事業全体での協業関係を構築することが重要ではないでしょうか。

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弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC03.pdf
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毎日、電車に乗って通勤していますが、中吊り広告に自然と目がいくものです。そこで最近面白い広告を見かけました。大阪ガスのエネファーム(http://www.ene-farm.info/link/)の広告なのですが、半分はハウスメーカーの広告(1枚の中吊りに1社のハウスメーカーで、広告ごとにハウスメーカーが異なる広告)になっていました。エネファームは当然、住宅に付随して使用されるわけなので、エンドユーザーは住宅購入者です。そのエンドユーザーが集まる場のひとつである電車内に、ハウスメーカーと共にエネファームの使用イメージも含めて発信するという手法は斬新だと感じました。
そこで、サプライヤとメーカーとの協業のあり方を見直してみたいと思います。

2.サプライヤとメーカーの協業の歴史
※ここで、メーカーとは最終製品を作るセットメーカーのことで、サプライヤとは、その最終製品に必要な部品を生産するメーカーのことです。
そもそも、なぜサプライヤとメーカーが協業しなければならないのでしょうか。メーカーが部品から最終製品まですべて製造していた時代では、協業関係を構築する必要はありませんでした。しかし、顧客要求が高度化し、メーカー1社ですべての技術を開発するのは不可能になってきました。そこで、差別化要素にならない技術は、自社で開発することをやめて、要求仕様を満足する部品を購入して、それを活用することで補完し始めました。顧客要求の変動も激しく、開発サイクルが短期化したこともこれに拍車をかけています。
ただし、部品を購入するだけならば、協業関係まで構築する必要はありません。顧客要求がさらに高度化してしまい、メーカーの製品設計とサプライヤの部品設計とを擦り合わせないと実現できなくなってきたことが、協業を促したのではないでしょうか。一度外部化したにも関わらず、競合他社と差別化を図ろうとすると、内部化に迫られ、結果として協業という形に収まったと言えるのではないでしょうか。

3.昨今の協業の実態
協業の歴史からみえてきたように、現在の協業は、製品開発段階を中心に行われています。技術を外部化した後に、内部化しようとしているために、メーカーに技術がなくなっていることも影響していると思われます。メーカーに技術が残っていれば、サプライヤと共同開発する必要はなく、サプライヤに部品仕様を渡して、それを購入すればよいわけです。しかし、技術の進歩が早いために、メーカーがキャッチアップできなくなっている事実があるように思います。技術分野を絞り込んでいるがために、サプライヤの技術の方が先端を走っているということでしょう。メーカーは各サプライヤ技術を統合する技術、あるいは製品全体をうまく制御する技術
を中心に磨くことに集中するようになっているのではないでしょうか。
自動車業界において、このようなことが進んでいることを法政大学准教授の近能善範氏も以下のURLで述べられています。
※「進むサプライヤーの“絞込み”、中核的サプライヤーは10分の1の20社に」法政大学経営学部准教授 近能善範氏 http://e2a.jp/interview/080107.shtml

サプライヤの側から見直すと、製品開発プロジェクトに参画することで、早期に仕様を把握できるとともに、他社に対して、参入障壁を作りやすくなっています。製品開発プロジェクトに参画するためには、先端技術開発を継続的に蓄積して、競合他社以上の技術力を保有しなければなりません。

これまで見てきたように、サプライヤとメーカーの協業関係は、お互いにとってメリットのある体制であることが分かります。

4.これからの協業の動向
それではこれから、サプライヤとメーカーの協業関係はどう変わっていくのでしょうか。大きく2つの方向性があるのではないでしょうか。
一つ目の方向性は、冒頭に電車の中吊り広告のように、営業領域(販売や販促など)での協業関係です。サプライヤも最終製品が売れてこそ、儲かるわけですから、最終製品とともに自社製品を宣伝することは今後増えてくるのではないでしょうか。最終製品のコア部品を供給している力のあるサプライヤ(例えば、冒頭の事例の大阪ガスなど)は最終製品の販売でも協業することもあるかも知れません。
二つ目の方向性は、環境対応のための協業関係です。最終製品には、サプライヤの生産した部品が含まれていますので、環境に無害な最終製品を作るにはサプライヤの協力が欠かせません。一方、サプライヤにとっても、環境に無害に材料にするためには何かしらの仕様を達成できない可能性が出てきますので、メーカーとの仕様擦り合わせが必要になります。そのために、協業関係が必要になります。またリバース物流(製品の回収や改良、修理の流れ)の構築にも、サプライヤとの協業関係が必要不可欠です。

5.協業の広がり
最後に、協業の対象範囲を整理したいと思います。そこで弊社が提唱している「Xチェーン」(「Xチェーン経営」http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.htm)という枠組みを活用したいと思います。この枠組みでは事業は「デマンドチェーン(マーケティング・営業領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義しています。エンジニアリングチェーンで始まったサプライヤとメーカーの協業関係は、徐々にデマンドチェーンに広がりつつあります。また、「環境対応」をキーワードに、サプライチェーンの協業関係も重要になりつつあります。コア部品の技術が製品の性能に影響を与えることを考えると、サービスチェーンでもコア部品の技術を持つサプライヤと協業しないとメンテナンス・サービスも提供できない状況でしょう。
このように、製品開発領域で始まった協業関係は、事業全体に拡大しつつある実態が見えてきました。むしろ、今後事業全体での協業関係を構築することが重要ではないでしょうか。

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