クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)で会社を変貌させる
1.クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)とは
= はじめに =
クロス・ファンクショナル・チーム(以下、CFT)と聞いて、日産自動車の改革活動(日産V-upプログラム)を思い浮かべる方も多いかと思います。CFTが優れた手法であることは、カルロス・ゴーン社長の下、日産自動車が
V字回復を達成したことが物語っているかと思います。私もCFTという改革手法の有効性を強く感じている一人として、「なぜ有効なのか」「どう適用すべきなのか」また「どんなことに気をつけるべきか」などについて、
コンサル経験から得られた知恵も織り交ぜながら、整理したいと思います。少しでも参考になれば、幸いです。
【参考】「日産自動車 V-upプログラムに見る業務改善手法」 (日経情報ストラテジー July2005 P.56-73)
= CFTの定義 =
INVENIO Co.,Ltd.では、CFTを以下のように定義しています。
URL: http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/crossfunctional_team.html

CFTの例として、製品供給リードタイムの短縮を目的に、営業・調達・製造・物流の各部門から数名ずつが参加して、CFTを結成し、その中でサプライチェーン(SC)内に潜むロスを発見し、それを削減するような改革活動が想定されます。別の例としては、製品ライフサイクルの短期化に伴い、開発期間短縮を目的に、開発・生産技術・調達・品質保証の各部門参加型のCFTを検討されている企業さんも多いのではないでしょうか。
= CFTの例 =
CFTの例として、製品供給リードタイムの短縮を目的に、営業・調達・製造・物流の各部門から数名ずつが参加して、CFTを結成し、その中でサプライチェーン(SC)内に潜むロスを発見し、それを削減するような改革活動が想定されます。

別の例としては、製品ライフサイクルの短期化に伴い、開発期間短縮を目的に、開発・生産技術・調達・品質保証の各部門参加型のCFTを検討されている企業さんも多いのではないでしょうか。

それでは、なぜCFTを結成するようになったのでしょうか。またCFTを結成するとどんなメリットがあるのでしょうか。この点から整理したいと思います。
2. CFTの必要性・メリットについて
まず、CFTの必要性についてですが、これまで部門ごとの改革活動がし尽くされてきていて、大きな活動成果を得られにくくなっていることが背景にあるのではないでしょうか。また、現在の非効率の原因が部門間に潜んでいることや、問題が発生している部門と問題の原因を作っている部門が必ずしも一致しないこと(例えば、在庫は倉庫で増加するが、原因は需要に連動した生産計画になっていない)なども影響しているように思います。
顧客要求を受けてから製品を顧客に届けるまでの業務プロセスは、部門を跨いで繋がっているにも関わらず、部門ごとの分業が進んでしまい、全体を俯瞰したり、管理したりすることができにくくなりました。そこで、各部門が一堂に会して、全体を俯瞰する場としてのCFTが必要になってきたように思います。
全体俯瞰ができれば、顧客への提供価値を最大化(例えば、低価格や短納期)する上での阻害要因を数多く発見することができますし、また部門ごとに立場が違うことを活かして、様々な視点から解決策を検討できます。
当然、解決策を検討する中で、それぞれの部門の利害が必ずしも一致せず、衝突が起きるかも知れませんが、経験上、「顧客への提供価値最大化のために各部門が何ができるか」という発想で、全員が同じ目的を共有できれば、最善策は必ず見付かるように思います。


3. CFTによる改革活動実践のポイント
コンサル経験上、もっとも重要なポイントは各部門の参加者が、「Face to Faceで議論する」ことだと考えます。これは当たり前のことですが、顔を合わせるからこそ、お互いに腹を割って、話合うことができ、最善策を検討することが出来ると思います。ただし、特定部門だけの利益に偏らないように、中立的な第3者の参加は
必要でしょうが。
CFTメンバー選出におけるポイントとしては、問題意識を持ち、改革へのモチベーションが高い人を選出することや、実務層だけでなく、権限を持った管理層(部課長レベル)も選出することが挙げられます。
活動運営におけるポイントとしては、全体俯瞰できるリーダーの育成、活動の進捗管理やリーダーのサポートという役割を担う事務局の設置が考えられます。これらの人たちの舵取り如何で全体最適化の議論になるかが左右され、ひいては活動成果に影響してくることでしょう。

最後に、CFTを定着させて、継続的に改革活動を実践するためにはどうすべきかを整理したいと思います。
4. CFTによる改革活動の定着化に向けて
CFTの定着においてもっとも重要なのは、組織トップ層による強力な活動推進だと考えます。トップ層がCFTの必要性・有効性を強く感じ、CFTによる改革活動を認めていることを明言することが必要ではないでしょうか。これによりCFT参加メンバーは安心して議論ができます。次には、改革リーダーや事務局の人材を育成する仕組みの構築ではないでしょうか。なぜなら、前述したようにこれらの人材の有無で活動成果が左右されるからです。特に、事務局は、改革活動が複数発生するようになると、それらの間の整合性を取るという機能も併せ持つ必要があります。
また、活動意欲のあるメンバーを増やすためには、成功体験をしてもらう必要があります。そのためには大きな難しいテーマだけでなく、日常的なテーマも取り上げることが重要です。

5.最後に
現在の激しい市場環境を勝ち抜くために、これまでよりもより広い範囲(*2)での全体最適化を実現するべく、CFTを結成し、充分議論させることをお勧めします。部門の壁を打破された企業さんは、組織の壁を越えて、グループ会社やサプライヤなどと議論する場を設けては如何でしょうか。きっと新たな発見があることでしょう。
(*2)弊社ではサプライチェーンマネジメント(SCM)の概念をマーケティング領域や製品開発領域などを含めた事業全体に拡張したエックスチェーンマネジメント(XCM; 出版「Xチェーン経営」http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.html)という概念を提唱しています。SC領域でのCFTを実践された企業さんは、XC領域(事業全体)でのCFTを実践されては如何でしょうか。

関連商品: 「 ビジネスプロセス改革」コンサルティング
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC03.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048/017/
困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html
コンサルティングのお問い合わせ先:
bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください
= はじめに =
クロス・ファンクショナル・チーム(以下、CFT)と聞いて、日産自動車の改革活動(日産V-upプログラム)を思い浮かべる方も多いかと思います。CFTが優れた手法であることは、カルロス・ゴーン社長の下、日産自動車が
V字回復を達成したことが物語っているかと思います。私もCFTという改革手法の有効性を強く感じている一人として、「なぜ有効なのか」「どう適用すべきなのか」また「どんなことに気をつけるべきか」などについて、
コンサル経験から得られた知恵も織り交ぜながら、整理したいと思います。少しでも参考になれば、幸いです。
【参考】「日産自動車 V-upプログラムに見る業務改善手法」 (日経情報ストラテジー July2005 P.56-73)
= CFTの定義 =
INVENIO Co.,Ltd.では、CFTを以下のように定義しています。
URL: http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/crossfunctional_team.html

CFTの例として、製品供給リードタイムの短縮を目的に、営業・調達・製造・物流の各部門から数名ずつが参加して、CFTを結成し、その中でサプライチェーン(SC)内に潜むロスを発見し、それを削減するような改革活動が想定されます。別の例としては、製品ライフサイクルの短期化に伴い、開発期間短縮を目的に、開発・生産技術・調達・品質保証の各部門参加型のCFTを検討されている企業さんも多いのではないでしょうか。
= CFTの例 =
CFTの例として、製品供給リードタイムの短縮を目的に、営業・調達・製造・物流の各部門から数名ずつが参加して、CFTを結成し、その中でサプライチェーン(SC)内に潜むロスを発見し、それを削減するような改革活動が想定されます。

別の例としては、製品ライフサイクルの短期化に伴い、開発期間短縮を目的に、開発・生産技術・調達・品質保証の各部門参加型のCFTを検討されている企業さんも多いのではないでしょうか。

それでは、なぜCFTを結成するようになったのでしょうか。またCFTを結成するとどんなメリットがあるのでしょうか。この点から整理したいと思います。
2. CFTの必要性・メリットについて
まず、CFTの必要性についてですが、これまで部門ごとの改革活動がし尽くされてきていて、大きな活動成果を得られにくくなっていることが背景にあるのではないでしょうか。また、現在の非効率の原因が部門間に潜んでいることや、問題が発生している部門と問題の原因を作っている部門が必ずしも一致しないこと(例えば、在庫は倉庫で増加するが、原因は需要に連動した生産計画になっていない)なども影響しているように思います。
顧客要求を受けてから製品を顧客に届けるまでの業務プロセスは、部門を跨いで繋がっているにも関わらず、部門ごとの分業が進んでしまい、全体を俯瞰したり、管理したりすることができにくくなりました。そこで、各部門が一堂に会して、全体を俯瞰する場としてのCFTが必要になってきたように思います。
全体俯瞰ができれば、顧客への提供価値を最大化(例えば、低価格や短納期)する上での阻害要因を数多く発見することができますし、また部門ごとに立場が違うことを活かして、様々な視点から解決策を検討できます。
当然、解決策を検討する中で、それぞれの部門の利害が必ずしも一致せず、衝突が起きるかも知れませんが、経験上、「顧客への提供価値最大化のために各部門が何ができるか」という発想で、全員が同じ目的を共有できれば、最善策は必ず見付かるように思います。


3. CFTによる改革活動実践のポイント
コンサル経験上、もっとも重要なポイントは各部門の参加者が、「Face to Faceで議論する」ことだと考えます。これは当たり前のことですが、顔を合わせるからこそ、お互いに腹を割って、話合うことができ、最善策を検討することが出来ると思います。ただし、特定部門だけの利益に偏らないように、中立的な第3者の参加は
必要でしょうが。
CFTメンバー選出におけるポイントとしては、問題意識を持ち、改革へのモチベーションが高い人を選出することや、実務層だけでなく、権限を持った管理層(部課長レベル)も選出することが挙げられます。
活動運営におけるポイントとしては、全体俯瞰できるリーダーの育成、活動の進捗管理やリーダーのサポートという役割を担う事務局の設置が考えられます。これらの人たちの舵取り如何で全体最適化の議論になるかが左右され、ひいては活動成果に影響してくることでしょう。

最後に、CFTを定着させて、継続的に改革活動を実践するためにはどうすべきかを整理したいと思います。
4. CFTによる改革活動の定着化に向けて
CFTの定着においてもっとも重要なのは、組織トップ層による強力な活動推進だと考えます。トップ層がCFTの必要性・有効性を強く感じ、CFTによる改革活動を認めていることを明言することが必要ではないでしょうか。これによりCFT参加メンバーは安心して議論ができます。次には、改革リーダーや事務局の人材を育成する仕組みの構築ではないでしょうか。なぜなら、前述したようにこれらの人材の有無で活動成果が左右されるからです。特に、事務局は、改革活動が複数発生するようになると、それらの間の整合性を取るという機能も併せ持つ必要があります。
また、活動意欲のあるメンバーを増やすためには、成功体験をしてもらう必要があります。そのためには大きな難しいテーマだけでなく、日常的なテーマも取り上げることが重要です。

5.最後に
現在の激しい市場環境を勝ち抜くために、これまでよりもより広い範囲(*2)での全体最適化を実現するべく、CFTを結成し、充分議論させることをお勧めします。部門の壁を打破された企業さんは、組織の壁を越えて、グループ会社やサプライヤなどと議論する場を設けては如何でしょうか。きっと新たな発見があることでしょう。
(*2)弊社ではサプライチェーンマネジメント(SCM)の概念をマーケティング領域や製品開発領域などを含めた事業全体に拡張したエックスチェーンマネジメント(XCM; 出版「Xチェーン経営」http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.html)という概念を提唱しています。SC領域でのCFTを実践された企業さんは、XC領域(事業全体)でのCFTを実践されては如何でしょうか。

関連商品: 「 ビジネスプロセス改革」コンサルティング
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC03.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048/017/
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景気の波の影響を受けにくい体質づくり
1.収益安定化のための体質づくりの必要性
= はじめに =
現在、100年に1度と言われる世界的な不況に陥っていますが、ここまでにないにしても、これまでも景気の山谷は存在していました。業界によって、周期は異なるかも知れませんが、どの業界でも必ず好調と不調を繰り返します。この繰り返しを乗り切りながら、企業は景気変動に強い体質を作っているのではないでしょうか。この体質作りを怠ると、最悪の場合倒産という結果を招くことになりかねません。
そこで、今回は景気の波を受けにくい体質にするために、言い換えれば収益を安定化させるために、どんな取り組みを実施すればよいか、考察したいと思います。
= 景気の波の影響を受ける要因 =
まず、どんなときに景気の波の影響を受けるのか、その要因となる要素を明確にしたいと思います。
産業財を扱うBtoBビジネスと、一般消費財を扱うBtoCビジネスがありますが、より景気変動の影響を受けやすいBtoBビジネスを対象にします。
BtoBビジネスの場合;
●製品が高額、あるいは案件1件(複数台の製品をまとめたもの)当たりが高額であるために、受注/失注の影響が大きく収益に影響する
●特定の業界に顧客が集中している
この実態を踏まえると、収益安定化策の基本方針としては、以下のようなものが設定できます。

2.収益安定化策の発見の視点
= 発見の視点 =
弊社は、事業を仕事の繋がりと捉えるプロセス視点から、改革・改善テーマを発見する手法を多用しています。これまでのコンサル実績から、「Xチェーン・マネジメント(XCM)」という新しい経営管手法を開発し、「Xチェーン経営」(http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.html)という本を出版しております。この手法では事業は「デマンドチェーン(マーケティング・営業領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義し、それらの繋がりに着目しています。この4つのチェーンごとに、前述の基本方針に適合した収益安定化策を探せば、視野広く、かつ偏りのなく発見することができます。
これ以降は、具体例としてどんなものが考えられるか考察します。

= デマンドチェーン(DC) =
定義: マーケティングや販促・営業活動など顧客から要求を引き出すプロセス

= エンジニアリングチェーン(EC) =
定義:デマンドチェーンで得られた要求を満足する製品を開発するプロセス

= サプライチェーン(SC) =
定義:エンジニアリングチェーンで開発した製品を日々生産して、顧客に提供するプロセス

= サービスチェーン(SvcC) =
定義:サプライチェーンで提供した製品に関するサービスを提供するプロセス

3.収益安定化策の候補
= 施策の絞り込み =
前述のように、Xチェーンの視点から、収益安定化策の候補を列挙しましたが、すべてを一度に着手できるわけではありません。ですから基本方針との適合性や効果性、実現性などの観点で上記の候補を評価して、着手順位を決めることになります。
以降では、比較的実現度が高く、効果も期待できると思われる以下を取り上げて、より詳しく見ていきたいと思います。
●「デマンドチェーン(DC)」
●「サービスチェーン(SvcC)」
= デマンドチェーン(DC)領域 =
この領域では、既存の商品、あるいは技術を別の市場に提供することで、収益源を増やすというのが基本戦略です。市場規模もあり、既存市場と違う需要特性であれば、言うことなしですが、なかなか難しいのが実情ではないでしょうか。では、どうのように攻めるべき新市場を設定すればよいのでしょうか。
設定の観点としては、業界や企業規模、地域、製品用途などが考えられます。一つでなく、組み合わせることも有効です。例えば、業界と地域の組合せで、市場を区分してはどうでしょうか。
米国での販売不振が引き金となった現在の不況が、中国などのアジアから回復しつつあることを考えると、地域という観点は有効であると思われます。中国の需要特性である中国の人口の多さや将来の市場規模も考慮して、例えば「繊維業界」をターゲット市場とするというストーリー立てが考えられます。

= サービスチェーン(SvcC)領域 =
この領域では、製品だけでなく、それに付随したサービスを提供することで、顧客との接点を維持するとともに、継続的な収益源を獲得するのが基本戦略です。サービスの特徴は、製品需要が低迷したとしても、ある程度のサービス需要が安定的に存在することです。実際にサービス事業を収益源の柱としている企業も多くあります。
航空機業界には、エンブラエルEmbraerという乗客150人以下の小型ジェット機を製造・販売している会社がありますが、この会社は収益の第3の柱として、サービスを位置づけて、売上の約10%を占めています。ちなみに、第1の柱は、50~150人くらいのリージョナルジェット機販売(売上の64%)で、第2の柱は、50人以下のビジネスジェット機販売(売上の16%)となっています。サービスメニューとしては、サービスパーツ販売を中心に、整備需要、ジェット機のシミュレーション販売、リアルタイムモニタリング&解析サービスを提供しています。航空機のエンジン業界では、サービス事業が利益の75%を叩き出しているゼネラル・エレクトリックGEが存在し、飛行時間に応じて、顧客が料金を支払う契約形態を開発し、顧客であるエアラインにも好評です。GEも故障率を下げれば、利益を増大させることができるので、Win-Winの契約形態です。


4.リスク分散の必要性
世界同時不況で、国内の自動車メーカーの多くが赤字に転じていますが、それとともに自動車部品メーカーのみならず、産業設備メーカーなど多くの企業に影響が出ています。自動車業界の裾野の広さを改めて実感させれますが、ここで各メーカーも特定の業界に依存するのではなく、リスク分散を検討して、約10年後に訪れるであろう次の不況を乗り切る準備が必要ではないでしょうか。
関連商品: X-Chain Management」
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC00.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048/014/
困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html
コンサルティングのお問い合わせ先:
bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください
= はじめに =
現在、100年に1度と言われる世界的な不況に陥っていますが、ここまでにないにしても、これまでも景気の山谷は存在していました。業界によって、周期は異なるかも知れませんが、どの業界でも必ず好調と不調を繰り返します。この繰り返しを乗り切りながら、企業は景気変動に強い体質を作っているのではないでしょうか。この体質作りを怠ると、最悪の場合倒産という結果を招くことになりかねません。
そこで、今回は景気の波を受けにくい体質にするために、言い換えれば収益を安定化させるために、どんな取り組みを実施すればよいか、考察したいと思います。
= 景気の波の影響を受ける要因 =
まず、どんなときに景気の波の影響を受けるのか、その要因となる要素を明確にしたいと思います。
産業財を扱うBtoBビジネスと、一般消費財を扱うBtoCビジネスがありますが、より景気変動の影響を受けやすいBtoBビジネスを対象にします。
BtoBビジネスの場合;
●製品が高額、あるいは案件1件(複数台の製品をまとめたもの)当たりが高額であるために、受注/失注の影響が大きく収益に影響する
●特定の業界に顧客が集中している
この実態を踏まえると、収益安定化策の基本方針としては、以下のようなものが設定できます。

2.収益安定化策の発見の視点
= 発見の視点 =
弊社は、事業を仕事の繋がりと捉えるプロセス視点から、改革・改善テーマを発見する手法を多用しています。これまでのコンサル実績から、「Xチェーン・マネジメント(XCM)」という新しい経営管手法を開発し、「Xチェーン経営」(http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.html)という本を出版しております。この手法では事業は「デマンドチェーン(マーケティング・営業領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義し、それらの繋がりに着目しています。この4つのチェーンごとに、前述の基本方針に適合した収益安定化策を探せば、視野広く、かつ偏りのなく発見することができます。
これ以降は、具体例としてどんなものが考えられるか考察します。

= デマンドチェーン(DC) =
定義: マーケティングや販促・営業活動など顧客から要求を引き出すプロセス

= エンジニアリングチェーン(EC) =
定義:デマンドチェーンで得られた要求を満足する製品を開発するプロセス

= サプライチェーン(SC) =
定義:エンジニアリングチェーンで開発した製品を日々生産して、顧客に提供するプロセス

= サービスチェーン(SvcC) =
定義:サプライチェーンで提供した製品に関するサービスを提供するプロセス

3.収益安定化策の候補
= 施策の絞り込み =
前述のように、Xチェーンの視点から、収益安定化策の候補を列挙しましたが、すべてを一度に着手できるわけではありません。ですから基本方針との適合性や効果性、実現性などの観点で上記の候補を評価して、着手順位を決めることになります。
以降では、比較的実現度が高く、効果も期待できると思われる以下を取り上げて、より詳しく見ていきたいと思います。
●「デマンドチェーン(DC)」
●「サービスチェーン(SvcC)」
= デマンドチェーン(DC)領域 =
この領域では、既存の商品、あるいは技術を別の市場に提供することで、収益源を増やすというのが基本戦略です。市場規模もあり、既存市場と違う需要特性であれば、言うことなしですが、なかなか難しいのが実情ではないでしょうか。では、どうのように攻めるべき新市場を設定すればよいのでしょうか。
設定の観点としては、業界や企業規模、地域、製品用途などが考えられます。一つでなく、組み合わせることも有効です。例えば、業界と地域の組合せで、市場を区分してはどうでしょうか。
米国での販売不振が引き金となった現在の不況が、中国などのアジアから回復しつつあることを考えると、地域という観点は有効であると思われます。中国の需要特性である中国の人口の多さや将来の市場規模も考慮して、例えば「繊維業界」をターゲット市場とするというストーリー立てが考えられます。

= サービスチェーン(SvcC)領域 =
この領域では、製品だけでなく、それに付随したサービスを提供することで、顧客との接点を維持するとともに、継続的な収益源を獲得するのが基本戦略です。サービスの特徴は、製品需要が低迷したとしても、ある程度のサービス需要が安定的に存在することです。実際にサービス事業を収益源の柱としている企業も多くあります。
航空機業界には、エンブラエルEmbraerという乗客150人以下の小型ジェット機を製造・販売している会社がありますが、この会社は収益の第3の柱として、サービスを位置づけて、売上の約10%を占めています。ちなみに、第1の柱は、50~150人くらいのリージョナルジェット機販売(売上の64%)で、第2の柱は、50人以下のビジネスジェット機販売(売上の16%)となっています。サービスメニューとしては、サービスパーツ販売を中心に、整備需要、ジェット機のシミュレーション販売、リアルタイムモニタリング&解析サービスを提供しています。航空機のエンジン業界では、サービス事業が利益の75%を叩き出しているゼネラル・エレクトリックGEが存在し、飛行時間に応じて、顧客が料金を支払う契約形態を開発し、顧客であるエアラインにも好評です。GEも故障率を下げれば、利益を増大させることができるので、Win-Winの契約形態です。


4.リスク分散の必要性
世界同時不況で、国内の自動車メーカーの多くが赤字に転じていますが、それとともに自動車部品メーカーのみならず、産業設備メーカーなど多くの企業に影響が出ています。自動車業界の裾野の広さを改めて実感させれますが、ここで各メーカーも特定の業界に依存するのではなく、リスク分散を検討して、約10年後に訪れるであろう次の不況を乗り切る準備が必要ではないでしょうか。
関連商品: X-Chain Management」
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC00.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048/014/
困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html
コンサルティングのお問い合わせ先:
bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください
WEB型営業と実体営業のコラボレーションのすすめ
1.WEBを活用した営業を取り上げた背景
世界的な不況に陥った現在、「どうやって売上を確保するか(減少を食い止めるか)」に悩んでいる企業がほとんどではないでしょうか。コンサルティング業界に属する弊社も同様であり、案件が減少しております。この不況を乗り切るために、また不況脱出後に競合他社よりも多くの案件を獲得するために、営業改革に取り組み始めました。まだ道半ばですが、不況で苦しんでいる企業に参考になる部分もあるのではないかと思い、テーマに取り上げました。
この取り組みを始めて数ヶ月後、ソフトブレーン・サービスの工藤龍矢社長が「グーグル営業」(グーグル営業!地球一の営業と最強のチームを作る方法。 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4844326732/ref=sib_rdr_dp)という本を発見しました。これも名前は違いますが、「WEBを活用した営業と営業マンが訪問する営業で相乗効果を狙う」ということをテーマにした書籍でした。この書籍を目にしたことで、現在の弊社の取組みの方向性は正しいと確信を持ちました。このようなことからも、書くことを決めました。

2.WEB型営業とは
まず、WEB型営業とは何かを、念のために定義しておきたいと思います。大きく次の2つの要件を満たすものを、ここでは「WEB型営業」と定義したいと思います。

コンサルティングファームの中では小さい弊社は、認知度が低いので、多くの人に会社名や事業内容を露出することを重視して、多くの人が集まる外部サイトも併用して活用することを決めました。私の認識不足も大きいのですが、外部サイトを活用することで想定外のメリットもありました。アクセス関連データが容易に入手でき、その分析から顧客ニーズを推測できるというメリットです。それが判明してから、「顧客ニーズを検証するために、多種多様な商品カタログを兎に角、発信しまくればよい」と考えました。


3.WEB型営業と実体営業の違い
それでは次に、人と人が顔を合わせることを基本とする訪問営業やセミナーなどの実体営業との違いから、WEB型営業の特徴をさらに浮き彫りしたいと思います。
面会を基本とする実体営業の特徴、及びWEB型営業の特徴としては、次のようなものが挙げられるのではないでしょうか。
以下のことからお分かりのように、実体営業とWEB型営業では特徴が異なり、一方の長所が他方の短所になっています。

4.WEB型営業と実体営業のコラボレーションの必要性と考え方
WEB型営業と実体営業のそれぞれの特徴が異なることから、2つの営業スタイルのいいところ取りをしたいところです。それでは、どのように2つの営業スタイルを使い分ければよいのでしょうか。これに関して、経験に基づいて考察したいと思います。
まず、対象顧客に注目してみます。それぞれの営業スタイルの特徴から、WEB型営業で新規顧客を獲得し、実体営業によって既顧客、あるいは固定客に育成していく戦略が立てられます。
次に、顧客ニーズに着目してみると、統計データが得られるWEB型営業では顧客ニーズの傾向を把握し、実体営業でそれを検証していく、という活用が考えられます。逆に、実体営業で得られた顧客ニーズをWEB上で発信して、大きな母集団で検証するということも可能です。このようなサイクルを形成することで、より精度の高く顧客ニーズを把握することができます。

5.WEB型営業と実体営業の将来性
さらに発想を転換させて、WEB型営業の手法を実体営業で活用したり、逆に実体営業の手法をWEB型営業に適用したりすれば、より効果的な営業を実現できるのではないでしょうか。
皆様もご存知のように、実体営業での広告宣伝手法をWEBの世界に持ち込み、その後WEBの特性を活かして独自発展してきました。WEB上ではキーワード検索という独特な機能があり、この活用によりターゲット顧客の多そうなページに広告宣伝を発信するようになりました。またアクセス情報から、顧客の訪問経路を容易に分析できるのもWEB独特の機能です。しかし、最近アパレル業界などでは、RFIDなどを用いて、顧客がどの商品に興味を持ったかをデータ化(見える化)として蓄積するような試みをしています。これこそ、WEB型営業の手法を実体営業に適用した事例と言えるのではないでしょうか。
WEB型営業と実体営業の垣根が低くなりつつある現在、重要なことはそれぞれの特徴を理解して、それぞれを使い分けることではないでしょうか。2つの営業スタイルをコラボレーションさせる仕組みを構築し、継続的にマーケティング技術・営業技術を構築することではないでしょうか。このとき、より科学的にマーケティングを実行するために、顧客ニーズを数値化することも忘れてはならないポイントでしょう。なぜならば、数値化でき、「見える化」ができると、それを検証したくなるのが人間だからです。今回の経験を通じて強く「見える化」の威力を実感しました。

6.最後に
最後に、マーケティング・営業機能と他の機能、例えば、製品開発やサービスとの関係に関して触れたいと思います。なぜならば、マーケティングで入手した顧客ニーズを製品として形で実現しなければ、収益として獲得できないからです。
弊社では「Xチェーン経営」(http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.html)という本を出版しております。この本の中では事業は「デマンドチェーン(マーケティング・営業領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義し、それらの繋がりに着目して、経営を管理する新しい手法を紹介しています。顧客のニーズの流れで、各チェーンの関連を整理すると、以下のようになります。

精度高く顧客ニーズを把握して、それを効果的に収益獲得に結びつける仕組みを構築されることをお勧めします。
関連商品: 「ビジネスモデルからITシステム企画まで一気通貫」コンサルティング
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC09.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048/030/
困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html
コンサルティングのお問い合わせ先:
bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください
世界的な不況に陥った現在、「どうやって売上を確保するか(減少を食い止めるか)」に悩んでいる企業がほとんどではないでしょうか。コンサルティング業界に属する弊社も同様であり、案件が減少しております。この不況を乗り切るために、また不況脱出後に競合他社よりも多くの案件を獲得するために、営業改革に取り組み始めました。まだ道半ばですが、不況で苦しんでいる企業に参考になる部分もあるのではないかと思い、テーマに取り上げました。
この取り組みを始めて数ヶ月後、ソフトブレーン・サービスの工藤龍矢社長が「グーグル営業」(グーグル営業!地球一の営業と最強のチームを作る方法。 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4844326732/ref=sib_rdr_dp)という本を発見しました。これも名前は違いますが、「WEBを活用した営業と営業マンが訪問する営業で相乗効果を狙う」ということをテーマにした書籍でした。この書籍を目にしたことで、現在の弊社の取組みの方向性は正しいと確信を持ちました。このようなことからも、書くことを決めました。

2.WEB型営業とは
まず、WEB型営業とは何かを、念のために定義しておきたいと思います。大きく次の2つの要件を満たすものを、ここでは「WEB型営業」と定義したいと思います。

コンサルティングファームの中では小さい弊社は、認知度が低いので、多くの人に会社名や事業内容を露出することを重視して、多くの人が集まる外部サイトも併用して活用することを決めました。私の認識不足も大きいのですが、外部サイトを活用することで想定外のメリットもありました。アクセス関連データが容易に入手でき、その分析から顧客ニーズを推測できるというメリットです。それが判明してから、「顧客ニーズを検証するために、多種多様な商品カタログを兎に角、発信しまくればよい」と考えました。


3.WEB型営業と実体営業の違い
それでは次に、人と人が顔を合わせることを基本とする訪問営業やセミナーなどの実体営業との違いから、WEB型営業の特徴をさらに浮き彫りしたいと思います。
面会を基本とする実体営業の特徴、及びWEB型営業の特徴としては、次のようなものが挙げられるのではないでしょうか。
以下のことからお分かりのように、実体営業とWEB型営業では特徴が異なり、一方の長所が他方の短所になっています。

4.WEB型営業と実体営業のコラボレーションの必要性と考え方
WEB型営業と実体営業のそれぞれの特徴が異なることから、2つの営業スタイルのいいところ取りをしたいところです。それでは、どのように2つの営業スタイルを使い分ければよいのでしょうか。これに関して、経験に基づいて考察したいと思います。
まず、対象顧客に注目してみます。それぞれの営業スタイルの特徴から、WEB型営業で新規顧客を獲得し、実体営業によって既顧客、あるいは固定客に育成していく戦略が立てられます。
次に、顧客ニーズに着目してみると、統計データが得られるWEB型営業では顧客ニーズの傾向を把握し、実体営業でそれを検証していく、という活用が考えられます。逆に、実体営業で得られた顧客ニーズをWEB上で発信して、大きな母集団で検証するということも可能です。このようなサイクルを形成することで、より精度の高く顧客ニーズを把握することができます。

5.WEB型営業と実体営業の将来性
さらに発想を転換させて、WEB型営業の手法を実体営業で活用したり、逆に実体営業の手法をWEB型営業に適用したりすれば、より効果的な営業を実現できるのではないでしょうか。
皆様もご存知のように、実体営業での広告宣伝手法をWEBの世界に持ち込み、その後WEBの特性を活かして独自発展してきました。WEB上ではキーワード検索という独特な機能があり、この活用によりターゲット顧客の多そうなページに広告宣伝を発信するようになりました。またアクセス情報から、顧客の訪問経路を容易に分析できるのもWEB独特の機能です。しかし、最近アパレル業界などでは、RFIDなどを用いて、顧客がどの商品に興味を持ったかをデータ化(見える化)として蓄積するような試みをしています。これこそ、WEB型営業の手法を実体営業に適用した事例と言えるのではないでしょうか。
WEB型営業と実体営業の垣根が低くなりつつある現在、重要なことはそれぞれの特徴を理解して、それぞれを使い分けることではないでしょうか。2つの営業スタイルをコラボレーションさせる仕組みを構築し、継続的にマーケティング技術・営業技術を構築することではないでしょうか。このとき、より科学的にマーケティングを実行するために、顧客ニーズを数値化することも忘れてはならないポイントでしょう。なぜならば、数値化でき、「見える化」ができると、それを検証したくなるのが人間だからです。今回の経験を通じて強く「見える化」の威力を実感しました。

6.最後に
最後に、マーケティング・営業機能と他の機能、例えば、製品開発やサービスとの関係に関して触れたいと思います。なぜならば、マーケティングで入手した顧客ニーズを製品として形で実現しなければ、収益として獲得できないからです。
弊社では「Xチェーン経営」(http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.html)という本を出版しております。この本の中では事業は「デマンドチェーン(マーケティング・営業領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義し、それらの繋がりに着目して、経営を管理する新しい手法を紹介しています。顧客のニーズの流れで、各チェーンの関連を整理すると、以下のようになります。

精度高く顧客ニーズを把握して、それを効果的に収益獲得に結びつける仕組みを構築されることをお勧めします。
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サプライヤとの協業範囲を広げてビジネスを成功させよう
1.サプライヤとメーカーの協業の必要性
毎日、電車に乗って通勤していますが、中吊り広告に自然と目がいくものです。そこで最近面白い広告を見かけました。大阪ガスのエネファーム(http://www.ene-farm.info/link/)の広告なのですが、半分はハウスメーカーの広告(1枚の中吊りに1社のハウスメーカーで、広告ごとにハウスメーカーが異なる広告)になっていました。エネファームは当然、住宅に付随して使用されるわけなので、エンドユーザーは住宅購入者です。そのエンドユーザーが集まる場のひとつである電車内に、ハウスメーカーと共にエネファームの使用イメージも含めて発信するという手法は斬新だと感じました。
そこで、サプライヤとメーカーとの協業のあり方を見直してみたいと思います。

2.サプライヤとメーカーの協業の歴史
※ここで、メーカーとは最終製品を作るセットメーカーのことで、サプライヤとは、その最終製品に必要な部品を生産するメーカーのことです。
そもそも、なぜサプライヤとメーカーが協業しなければならないのでしょうか。メーカーが部品から最終製品まですべて製造していた時代では、協業関係を構築する必要はありませんでした。しかし、顧客要求が高度化し、メーカー1社ですべての技術を開発するのは不可能になってきました。そこで、差別化要素にならない技術は、自社で開発することをやめて、要求仕様を満足する部品を購入して、それを活用することで補完し始めました。顧客要求の変動も激しく、開発サイクルが短期化したこともこれに拍車をかけています。
ただし、部品を購入するだけならば、協業関係まで構築する必要はありません。顧客要求がさらに高度化してしまい、メーカーの製品設計とサプライヤの部品設計とを擦り合わせないと実現できなくなってきたことが、協業を促したのではないでしょうか。一度外部化したにも関わらず、競合他社と差別化を図ろうとすると、内部化に迫られ、結果として協業という形に収まったと言えるのではないでしょうか。

3.昨今の協業の実態
協業の歴史からみえてきたように、現在の協業は、製品開発段階を中心に行われています。技術を外部化した後に、内部化しようとしているために、メーカーに技術がなくなっていることも影響していると思われます。メーカーに技術が残っていれば、サプライヤと共同開発する必要はなく、サプライヤに部品仕様を渡して、それを購入すればよいわけです。しかし、技術の進歩が早いために、メーカーがキャッチアップできなくなっている事実があるように思います。技術分野を絞り込んでいるがために、サプライヤの技術の方が先端を走っているということでしょう。メーカーは各サプライヤ技術を統合する技術、あるいは製品全体をうまく制御する技術
を中心に磨くことに集中するようになっているのではないでしょうか。
自動車業界において、このようなことが進んでいることを法政大学准教授の近能善範氏も以下のURLで述べられています。
※「進むサプライヤーの“絞込み”、中核的サプライヤーは10分の1の20社に」法政大学経営学部准教授 近能善範氏 http://e2a.jp/interview/080107.shtml

サプライヤの側から見直すと、製品開発プロジェクトに参画することで、早期に仕様を把握できるとともに、他社に対して、参入障壁を作りやすくなっています。製品開発プロジェクトに参画するためには、先端技術開発を継続的に蓄積して、競合他社以上の技術力を保有しなければなりません。

これまで見てきたように、サプライヤとメーカーの協業関係は、お互いにとってメリットのある体制であることが分かります。

4.これからの協業の動向
それではこれから、サプライヤとメーカーの協業関係はどう変わっていくのでしょうか。大きく2つの方向性があるのではないでしょうか。
一つ目の方向性は、冒頭に電車の中吊り広告のように、営業領域(販売や販促など)での協業関係です。サプライヤも最終製品が売れてこそ、儲かるわけですから、最終製品とともに自社製品を宣伝することは今後増えてくるのではないでしょうか。最終製品のコア部品を供給している力のあるサプライヤ(例えば、冒頭の事例の大阪ガスなど)は最終製品の販売でも協業することもあるかも知れません。
二つ目の方向性は、環境対応のための協業関係です。最終製品には、サプライヤの生産した部品が含まれていますので、環境に無害な最終製品を作るにはサプライヤの協力が欠かせません。一方、サプライヤにとっても、環境に無害に材料にするためには何かしらの仕様を達成できない可能性が出てきますので、メーカーとの仕様擦り合わせが必要になります。そのために、協業関係が必要になります。またリバース物流(製品の回収や改良、修理の流れ)の構築にも、サプライヤとの協業関係が必要不可欠です。

5.協業の広がり
最後に、協業の対象範囲を整理したいと思います。そこで弊社が提唱している「Xチェーン」(「Xチェーン経営」http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.htm)という枠組みを活用したいと思います。この枠組みでは事業は「デマンドチェーン(マーケティング・営業領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義しています。エンジニアリングチェーンで始まったサプライヤとメーカーの協業関係は、徐々にデマンドチェーンに広がりつつあります。また、「環境対応」をキーワードに、サプライチェーンの協業関係も重要になりつつあります。コア部品の技術が製品の性能に影響を与えることを考えると、サービスチェーンでもコア部品の技術を持つサプライヤと協業しないとメンテナンス・サービスも提供できない状況でしょう。
このように、製品開発領域で始まった協業関係は、事業全体に拡大しつつある実態が見えてきました。むしろ、今後事業全体での協業関係を構築することが重要ではないでしょうか。

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毎日、電車に乗って通勤していますが、中吊り広告に自然と目がいくものです。そこで最近面白い広告を見かけました。大阪ガスのエネファーム(http://www.ene-farm.info/link/)の広告なのですが、半分はハウスメーカーの広告(1枚の中吊りに1社のハウスメーカーで、広告ごとにハウスメーカーが異なる広告)になっていました。エネファームは当然、住宅に付随して使用されるわけなので、エンドユーザーは住宅購入者です。そのエンドユーザーが集まる場のひとつである電車内に、ハウスメーカーと共にエネファームの使用イメージも含めて発信するという手法は斬新だと感じました。
そこで、サプライヤとメーカーとの協業のあり方を見直してみたいと思います。

2.サプライヤとメーカーの協業の歴史
※ここで、メーカーとは最終製品を作るセットメーカーのことで、サプライヤとは、その最終製品に必要な部品を生産するメーカーのことです。
そもそも、なぜサプライヤとメーカーが協業しなければならないのでしょうか。メーカーが部品から最終製品まですべて製造していた時代では、協業関係を構築する必要はありませんでした。しかし、顧客要求が高度化し、メーカー1社ですべての技術を開発するのは不可能になってきました。そこで、差別化要素にならない技術は、自社で開発することをやめて、要求仕様を満足する部品を購入して、それを活用することで補完し始めました。顧客要求の変動も激しく、開発サイクルが短期化したこともこれに拍車をかけています。
ただし、部品を購入するだけならば、協業関係まで構築する必要はありません。顧客要求がさらに高度化してしまい、メーカーの製品設計とサプライヤの部品設計とを擦り合わせないと実現できなくなってきたことが、協業を促したのではないでしょうか。一度外部化したにも関わらず、競合他社と差別化を図ろうとすると、内部化に迫られ、結果として協業という形に収まったと言えるのではないでしょうか。

3.昨今の協業の実態
協業の歴史からみえてきたように、現在の協業は、製品開発段階を中心に行われています。技術を外部化した後に、内部化しようとしているために、メーカーに技術がなくなっていることも影響していると思われます。メーカーに技術が残っていれば、サプライヤと共同開発する必要はなく、サプライヤに部品仕様を渡して、それを購入すればよいわけです。しかし、技術の進歩が早いために、メーカーがキャッチアップできなくなっている事実があるように思います。技術分野を絞り込んでいるがために、サプライヤの技術の方が先端を走っているということでしょう。メーカーは各サプライヤ技術を統合する技術、あるいは製品全体をうまく制御する技術
を中心に磨くことに集中するようになっているのではないでしょうか。
自動車業界において、このようなことが進んでいることを法政大学准教授の近能善範氏も以下のURLで述べられています。
※「進むサプライヤーの“絞込み”、中核的サプライヤーは10分の1の20社に」法政大学経営学部准教授 近能善範氏 http://e2a.jp/interview/080107.shtml

サプライヤの側から見直すと、製品開発プロジェクトに参画することで、早期に仕様を把握できるとともに、他社に対して、参入障壁を作りやすくなっています。製品開発プロジェクトに参画するためには、先端技術開発を継続的に蓄積して、競合他社以上の技術力を保有しなければなりません。

これまで見てきたように、サプライヤとメーカーの協業関係は、お互いにとってメリットのある体制であることが分かります。

4.これからの協業の動向
それではこれから、サプライヤとメーカーの協業関係はどう変わっていくのでしょうか。大きく2つの方向性があるのではないでしょうか。
一つ目の方向性は、冒頭に電車の中吊り広告のように、営業領域(販売や販促など)での協業関係です。サプライヤも最終製品が売れてこそ、儲かるわけですから、最終製品とともに自社製品を宣伝することは今後増えてくるのではないでしょうか。最終製品のコア部品を供給している力のあるサプライヤ(例えば、冒頭の事例の大阪ガスなど)は最終製品の販売でも協業することもあるかも知れません。
二つ目の方向性は、環境対応のための協業関係です。最終製品には、サプライヤの生産した部品が含まれていますので、環境に無害な最終製品を作るにはサプライヤの協力が欠かせません。一方、サプライヤにとっても、環境に無害に材料にするためには何かしらの仕様を達成できない可能性が出てきますので、メーカーとの仕様擦り合わせが必要になります。そのために、協業関係が必要になります。またリバース物流(製品の回収や改良、修理の流れ)の構築にも、サプライヤとの協業関係が必要不可欠です。

5.協業の広がり
最後に、協業の対象範囲を整理したいと思います。そこで弊社が提唱している「Xチェーン」(「Xチェーン経営」http://www.jbc-con.co.jp/books/books_xcm.htm)という枠組みを活用したいと思います。この枠組みでは事業は「デマンドチェーン(マーケティング・営業領域)」「エンジニアリングチェーン(製品開発領域)」「サプライチェーン(製品供給)」「サービスチェーン」の4つから構成されると定義しています。エンジニアリングチェーンで始まったサプライヤとメーカーの協業関係は、徐々にデマンドチェーンに広がりつつあります。また、「環境対応」をキーワードに、サプライチェーンの協業関係も重要になりつつあります。コア部品の技術が製品の性能に影響を与えることを考えると、サービスチェーンでもコア部品の技術を持つサプライヤと協業しないとメンテナンス・サービスも提供できない状況でしょう。
このように、製品開発領域で始まった協業関係は、事業全体に拡大しつつある実態が見えてきました。むしろ、今後事業全体での協業関係を構築することが重要ではないでしょうか。

関連商品: 「 ビジネスプロセス改革」コンサルティング
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ユニクロの成功に学ぶ!「ポジショニング」「工業化」「顧客起点」の極意
1.ユニクロに関する記事の紹介
世界同時不況にありながら、売上や営業利益を伸ばしている好業績の企業は存在します。そのような企業の一つとして、柳井正CEOが率いる「ユニクロ」があります。2009年8月期には過去最高益を達成し、ファーストリテイリングの連結において、2009年度の売上6600億円、営業利益1010億円が見込まれています。日経ビジネス 2009年6月1日号(http://ec.nikkeibp.co.jp/item/backno/NB1493.html)では、特集として「ユニクロ~柳井イズムはトヨタを超えるか~」というタイトルで取り上げています。
ここではこの記事をベースに、ユニクロ好調の秘訣は何なのか、そこから適用できるエッセンスは何なのかを私なりに考察したいと思います。
日経ビジネスの記事内容の目次を列挙すると以下のようになります。

2.ユニクロ成功の秘訣
==3つの成功の秘訣==
日経ビジネスの特集記事を読んで、ユニクロ成功の秘訣は、タイトルにもありますが、次の3点に集約できると感じました。

==秘訣1.ポジショニング==
まず、ポジショニングに関してですが、競合他社のいない隙間の市場を狙う「ブルーオーシャン戦略」が功を奏しました。しかし、この商品ポジションを確立するには、繊維メーカーとの協業体制が絶対不可欠だったように思います。顧客ニーズを肌で感じているユニクロが商品を企画し、それを技術力を持った繊維メーカーが実現し、最終的にはユニクロが商品として製造・販売するというようにお互いの長所を繋げることができたからこそ、デザインだけじゃなく、機能性も兼ね備えた商品を生み出すことができたのだと思います。繊維メーカーも顧客ニーズに熟知したユニクロと組むことで「売れる」繊維を開発することができることもあり、より協業関係が強固なものになっているように感じました。

==秘訣3.顧客起点==
ここでさらに、うまいなと思ったことがありました。それは前述の秘訣の3番目に相当しますが、ある機能が実現できたら商品化して、販売していることです。東レとの共同開発の「ヒートテック」の商品では、「保湿性」が実現できたところで販売して、顧客ニーズを検証し、さらに「しっとり感」を実現したところでまた販売し、顧客ニーズを検証しています。商品化する度に、より高度な顧客ニーズに応えるべく商品を改良することで、販売枚数をどんどん伸ばしていることです。

==秘訣2.工業化==
この記事で最も感心したのは、「衣服を工業用品と捉える」発想です。製造から小売りまで一貫したSPA(製造小売業)モデルを、ユニクロは「工業化」という観点で進化させています。ユニクロの凄いところは、「工業化」を次の3つのように具体的に定義していることではないでしょうか。
◇技術の水平展開;製品は技術の組み合わせと捉え、技術を使い回して、多品種を実現する
◇ケイレツ化;生地作りから検査まで一気通貫化して、各生産会社と一緒に生産工程を作り上げる
◇継続的な改善;品質確保のために、不具合発生個所を特定し、現地・現物で解決する
ユニクロが競合他社のSPAモデルとは違うのは、上記の「工業化」の概念を取り入れているからだと強く思いました。

3.ユニクロに学ぶべきこと
ユニクロの成功の秘訣には、アパレル業界だからこそという点もありますが、より抽象化すれば他業界にも当てはまる秘訣が見えてくるのではないかと思います。
まず「ポジショニング」における成功のエッセンスは、顧客ニーズの徹底的な研究に基づき、競合他社の隙間市場を狙ったということではないでしょうか。低価格商品に対して顧客が足りないと強く感じているキー仕様をいくつか特定して、それを実現した商品を開発し、販売するということが秘訣だと思います。
次に「工業化」における成功のエッセンスは、2つあると考えます。一つは上述したように、製品を技術の組合せと見る発想で、技術を分解したり、統合したりして、より広い適用範囲を探すことが重要だと思います。2009/06/09の日経新聞に、安川電機が産業機械などに使うモーターやインバーターなどを組み合わせて、ハイブリッド車等の駆動装置を開発した記事が載っていましたが、これも技術の適用範囲拡大の好例ではないでしょうか。もうひとつは、「自社が品質の全責任を負う」という覚悟ではないでしょうか。だからこそ、ケイレツ化して生産工場を指導するし、継続的な改善を実現したくなるのではないでしょうか。
最後に「顧客起点での顧客ニーズの仮説&検証」における成功のエッセンスは、そのままで実直に顧客ニーズの仮説を立て、それを即時検証することを繰り返す仕組みを作ることでしょう。アパレルという業界だから、徐々に機能アップさせて、顧客ニーズを検証できたところもあるでしょうが、商品化せずに顧客ニーズを検証する手段を構築すれば、可能性は広がるのではないでしょうか。例えば、顧客に直接ヒアリングしたり、WEB上に掲載してそのアクセス数で検証するなどしては如何でしょうか。

4.最後に
ここまで、ユニクロの成功事例から学ぶべきエッセンスを考察してきましたが、業界によって、3つのエッセンスの重みづけは異なると思います。ユニクロのように一般消費者を顧客とするBtoCビジネスと、産業機器のような法人を顧客とするBtoBビジネスでは、重みづけは異なります。
この違いは、それぞれの商品仕様の最終決定者の違いに起因していると言えます。マーケティングを駆使して、商品仕様を自社が最終決定するBtoCと、顧客が商品仕様を決定するBtoBでは、BtoCの方が「ポジショニング」の僅かなミスが売上に大きく影響します。BtoBは顧客と仕様を擦り合わせるために、BtoC程「ポジショニング」のミスが大きく響きません。また「顧客ニーズの収集、仮説&検証」の具体的なやり方もBtoCとBtoBでは異なります。顧客への直接ヒアリング中心のBtoBに対して、統計データ中心のBtoCとなるでしょう。
「工業化」に関しては、BtoB/BtoCという観点よりも、事業が売上管理中心か、原価管理中心かで違うのではないでしょうか。これまで原価中心に管理してきた企業は「工業化」は進んでいるでしょうが、売上中心に管理してきた企業は「工業化」によるコスト削減余地が大きいでしょう。
ユニクロの成功の秘訣と企業の属する業界の特性を鑑みて、不況を乗り切られることをお勧めします。

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弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC02.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048/016/
困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html
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bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください
世界同時不況にありながら、売上や営業利益を伸ばしている好業績の企業は存在します。そのような企業の一つとして、柳井正CEOが率いる「ユニクロ」があります。2009年8月期には過去最高益を達成し、ファーストリテイリングの連結において、2009年度の売上6600億円、営業利益1010億円が見込まれています。日経ビジネス 2009年6月1日号(http://ec.nikkeibp.co.jp/item/backno/NB1493.html)では、特集として「ユニクロ~柳井イズムはトヨタを超えるか~」というタイトルで取り上げています。
ここではこの記事をベースに、ユニクロ好調の秘訣は何なのか、そこから適用できるエッセンスは何なのかを私なりに考察したいと思います。
日経ビジネスの記事内容の目次を列挙すると以下のようになります。

2.ユニクロ成功の秘訣
==3つの成功の秘訣==
日経ビジネスの特集記事を読んで、ユニクロ成功の秘訣は、タイトルにもありますが、次の3点に集約できると感じました。

==秘訣1.ポジショニング==
まず、ポジショニングに関してですが、競合他社のいない隙間の市場を狙う「ブルーオーシャン戦略」が功を奏しました。しかし、この商品ポジションを確立するには、繊維メーカーとの協業体制が絶対不可欠だったように思います。顧客ニーズを肌で感じているユニクロが商品を企画し、それを技術力を持った繊維メーカーが実現し、最終的にはユニクロが商品として製造・販売するというようにお互いの長所を繋げることができたからこそ、デザインだけじゃなく、機能性も兼ね備えた商品を生み出すことができたのだと思います。繊維メーカーも顧客ニーズに熟知したユニクロと組むことで「売れる」繊維を開発することができることもあり、より協業関係が強固なものになっているように感じました。

==秘訣3.顧客起点==
ここでさらに、うまいなと思ったことがありました。それは前述の秘訣の3番目に相当しますが、ある機能が実現できたら商品化して、販売していることです。東レとの共同開発の「ヒートテック」の商品では、「保湿性」が実現できたところで販売して、顧客ニーズを検証し、さらに「しっとり感」を実現したところでまた販売し、顧客ニーズを検証しています。商品化する度に、より高度な顧客ニーズに応えるべく商品を改良することで、販売枚数をどんどん伸ばしていることです。

==秘訣2.工業化==
この記事で最も感心したのは、「衣服を工業用品と捉える」発想です。製造から小売りまで一貫したSPA(製造小売業)モデルを、ユニクロは「工業化」という観点で進化させています。ユニクロの凄いところは、「工業化」を次の3つのように具体的に定義していることではないでしょうか。
◇技術の水平展開;製品は技術の組み合わせと捉え、技術を使い回して、多品種を実現する
◇ケイレツ化;生地作りから検査まで一気通貫化して、各生産会社と一緒に生産工程を作り上げる
◇継続的な改善;品質確保のために、不具合発生個所を特定し、現地・現物で解決する
ユニクロが競合他社のSPAモデルとは違うのは、上記の「工業化」の概念を取り入れているからだと強く思いました。

3.ユニクロに学ぶべきこと
ユニクロの成功の秘訣には、アパレル業界だからこそという点もありますが、より抽象化すれば他業界にも当てはまる秘訣が見えてくるのではないかと思います。
まず「ポジショニング」における成功のエッセンスは、顧客ニーズの徹底的な研究に基づき、競合他社の隙間市場を狙ったということではないでしょうか。低価格商品に対して顧客が足りないと強く感じているキー仕様をいくつか特定して、それを実現した商品を開発し、販売するということが秘訣だと思います。
次に「工業化」における成功のエッセンスは、2つあると考えます。一つは上述したように、製品を技術の組合せと見る発想で、技術を分解したり、統合したりして、より広い適用範囲を探すことが重要だと思います。2009/06/09の日経新聞に、安川電機が産業機械などに使うモーターやインバーターなどを組み合わせて、ハイブリッド車等の駆動装置を開発した記事が載っていましたが、これも技術の適用範囲拡大の好例ではないでしょうか。もうひとつは、「自社が品質の全責任を負う」という覚悟ではないでしょうか。だからこそ、ケイレツ化して生産工場を指導するし、継続的な改善を実現したくなるのではないでしょうか。
最後に「顧客起点での顧客ニーズの仮説&検証」における成功のエッセンスは、そのままで実直に顧客ニーズの仮説を立て、それを即時検証することを繰り返す仕組みを作ることでしょう。アパレルという業界だから、徐々に機能アップさせて、顧客ニーズを検証できたところもあるでしょうが、商品化せずに顧客ニーズを検証する手段を構築すれば、可能性は広がるのではないでしょうか。例えば、顧客に直接ヒアリングしたり、WEB上に掲載してそのアクセス数で検証するなどしては如何でしょうか。

4.最後に
ここまで、ユニクロの成功事例から学ぶべきエッセンスを考察してきましたが、業界によって、3つのエッセンスの重みづけは異なると思います。ユニクロのように一般消費者を顧客とするBtoCビジネスと、産業機器のような法人を顧客とするBtoBビジネスでは、重みづけは異なります。
この違いは、それぞれの商品仕様の最終決定者の違いに起因していると言えます。マーケティングを駆使して、商品仕様を自社が最終決定するBtoCと、顧客が商品仕様を決定するBtoBでは、BtoCの方が「ポジショニング」の僅かなミスが売上に大きく影響します。BtoBは顧客と仕様を擦り合わせるために、BtoC程「ポジショニング」のミスが大きく響きません。また「顧客ニーズの収集、仮説&検証」の具体的なやり方もBtoCとBtoBでは異なります。顧客への直接ヒアリング中心のBtoBに対して、統計データ中心のBtoCとなるでしょう。
「工業化」に関しては、BtoB/BtoCという観点よりも、事業が売上管理中心か、原価管理中心かで違うのではないでしょうか。これまで原価中心に管理してきた企業は「工業化」は進んでいるでしょうが、売上中心に管理してきた企業は「工業化」によるコスト削減余地が大きいでしょう。
ユニクロの成功の秘訣と企業の属する業界の特性を鑑みて、不況を乗り切られることをお勧めします。

関連商品: 「事業構造改革」コンサルティング
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC02.pdf
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