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コストダウンをSCM 観点から推進する

1.はじめに

コストダウン活動においても全体最適視点が欠かせない。企業全体のコスト水準を決定する製品構造、プロセス構造、運用構造の3つの視点からの追求が必要である。

2.サプライチェーンコスト追求にSCMの理念を活用して考える

・真のコスト競争力を強化するためにはサプライチェーン全体で発生するコストに取組む必要があります
・サプライチェーンプロセスには日々異なる製品が、変量的に流れ、発生するコストは日々変わります
・SCMの理念にそって、企業/組織横断で、サプライチェーンプロセス全体の運用を最適化することが重要です

SCM=顧客への価値提供プロセスを全体としてひとつのものと捉え直し、
企業や組織の壁を越えて全体最適化を継続的に行ない、高収益をもたらす経営手法
-Supply Chain Councilの定義より-

Supply Chain Management


3.サプライチェーンコスト検討対象は、製品・プロセス・運用の組み合わせで検討する

サプライチェーン全体の運用を最適化し、コスト最小とするためには、従来の製品別、部門別、企業別の個別の追求の壁を破り、全体最適の視点からの追求と実現を追及することが重要です。
 サプライチェーンマネージメントの考えに立脚すると、それを構成する対象として、複数の製品が、複数の部門や企業を流通し、そのプロダクトミックスや量の変動する環境下で最適な運用管理を行なうことで、ミニマムコストを実現することを考えていく必要があります。

製品&プロセス&運用の組合せ


製品がインフラを通過することで、コストが発生し、それをうまく運用することで、運用効率がきまります。この関係を認識することで、サプライチェーンコストの追求対象が明確になります。

4.サプライチェーン性能を前提とし活動を進める

全部門でサプライチェーンコストを追求するためには、サプライチェーンプロセスの姿とコスト水準を把握する必要があります。サプライチェーン構成対象に対して、コスト追求を行う際には、サプライチェーン性能を前提にして、改善追求を考えるべきです。そのために対象の姿と、SCM性能、コスト水準を明確化することが出発点です。

サプライチェーンコストの追求


サプライチェーン構成対象のコスト水準を元に、活動の優先度や改善可能性予測を仮説し、具体的な活動企画に結びつけると良いでしょう。

5.サプライチェーンコストを追求するための手順

サプライチェーンコストを追求するためには、構成要素個々の追求、群や連鎖の追求、組合せの追求、運用の効率を順次展開する。
サプライチェーンでは、複数の製品が、、複数の組織を流れ、その量と品種は、、日々変動しています。この条件下でコストを追求するには、品種間、組織間、変動運用面からの追求を行なう必要があり、先の構成毎に以下の視点で追求すると良いでしょう。

個別解から全体解へ


6.最後に

本書では、SCM視点に立ったコスト追求の対象と観点を中心に述べました。サプライチェーンコストは、対象や関係する部門が多岐にわたります。そのために、一度に全ての追求をしようとすると途中で挫折してします危険もあります。対象のコスト水準を可視化し、そのうえでどこからどのような順で追求するかを充分検討したうえで、着手することが望ましいと考えます。

コスト最適化の新たなアプローチとして、SCM観点に立ったコスト追求が多くの企業で注目され、始まっています。真のコスト競争力強化のために、何に取組むべきか、本書を一助としたご検討、邁進を期待します。

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SCMを目的から考える

1.はじめに

今回は、SCMで成果を得るための、SCMの目的設定のフレームについて紹介します。

=「在庫削減」がSCMの目的なのですか?=

サプライチェーンプロセスは、「市場(顧客)に価値(商品)を供給するプロセス」であり、サプライチェーンプロセスの価値は、供給するモノの価値(提供価値)と、そのモノを供給するプロセスの価値(プロセス効率)で捉えることができます。事業環境が変化する中で、市場はグローバル化し、企業主導から顧客主導へと主導権が移り、その環境下で収益を上げるためには、“提供価値”と“プロセス効率”の両方を追求していくことが求められます。
つまり、サプライチェーンマネジメント(SCM)は、サプライチェーンプロセスを「企業の持つ最高の提供価値を最高効率で供給するプロセス」に再構築する、企業がなすべき継続的な取り組みなのです。しかし、多くの企業は、SCMを一時的なものと捉え、成果が挙がらないから止めてしまったのではないでしょうか。

SCMで成果を得るためには、必ず最初に、進むべき方向性(目的)を明確に設定する必要があります。皆さんの企業では、「在庫削減」が目的になっていませんか。「IT導入」が目的にすり替わっていませんか。在庫削減は目標であって、目的ではありません。IT導入は手段であって、目的ではありません。真の目的は「在庫削減してどうしたいのか」「何のためにITを導入するか」ではないでしょうか。

=効果的な目的設定の方法=

目的の設定を「在庫削減」や「IT導入」としてしまう背景には、目的設定の難しさや成果に対する過剰意識があると考えられます。目的設定を効果的に設定する方法としては、先に示したサプライチェーンプロセスの価値(“提供価値”と“プロセス効率”)に対して、先ず

 ●提供価値 ⇒ 「攻めの目的」
 ●プロセス効率 ⇒ 「守りの目的」
として捉え、さらに、「攻めの目的」を
 (1)提供価値の向上
(2)提供価値の拡大
の2つに、「守りの目的」を
 (3)チェーン全体の生産性向上
 (4)“持つこと”のリスク低減


に分け、全部で4つのフレームから設定する方法が有効です。
このような4つのフレームで目的を設定することで、SCMを、経営戦略の本質とも言うべきマーケティング -市場に対して、必要とされるものを創造し、供給すること- を実現するための取り組みと捉えることにも繋がり、経営戦略に直結したSCMの目的を効果的に設定することができるのです。
本論では、以上のポイントについて詳細にご説明いたします。

2.SCMを目的から考える

SCMを推進し成果を得るためには、最初にSCMの明確な目的を設定する必要があります。プロセスモデルの設計、具体的な業務の設計、評価指標の設定などは、全て目的から導かれるものだからです。
「在庫削減」や「リードタイム短縮」を目的に設定する企業もありますが、それらは“目標”と考えるべきです。真の目的は「在庫削減してどうしたいのか」「何のためにリードタイムを短縮するのか」であり、その実現化を成し遂げたときの結果(プロセスの指標)として在庫が削減されたり、リードタイムが短縮されたりするのです。
SCMの目的の設定に当たって、大きく「攻めの目的」と「守りの目的」に分けて捉えます。
●供給するモノ(提供価値)に対するアプローチとしての「攻めの目的」
●モノを供給するプロセスに対するアプローチとしての「守りの目的」
これらのどちらに重点が置かれるかは、経営戦略により異なります。例えば、既存の商品を対象に、市場の変化に柔軟に対応できるプロセスを再構築するのであれば、守りの目的に重点が置かれます。
提供価値の最大化

3.SCMの「攻めの目的」を考える

目的設定を有効に進めるために、更に「攻めの目的」「守りの目的」を細分します。
「攻めの目的」は、供給するモノ(提供価値)に対するアプローチです。この「攻めの目的」を、「提供価値の向上」と「提供価値の拡大」に分けて設定します。

●提供価値の向上:提供価値の機能を高めることで、顧客満足度を上げる
●提供価値の拡大:提供価値を既存の商品に付随した新規商品にまで広げることで、顧客満足度を上げ、収益機会を拡げる


「提供価値の向上」では、部品メーカーを例にとると、組立メーカーに部品毎に供給していた(部品供給機能)ところを、部品をアッセンブリー単位にまとめてラインサイドに供給するようにすること(アッセンブル供給機能)が挙げられます。この場合、部品を供給するという意味(商品)では既存のままですが、まとめ直して供給することで、提供する機能を高めます。
「提供価値の拡大」では、プリンターメーカーを例にとると、プリンターを製造し販売していたところを、プリンターに付随するトナーや用紙などの消耗品の販売まで手がけることが挙げられます。この場合、プリンターを供給するという意味(機能)では既存のままですが、新たに消耗品まで手がけることで、提供する商品を拡大します。
これらの「攻めの目的」が設定されることで、既存の供給プロセスでは対応できなくなり、それに応じたサプライチェーンプロセスの再構築が必要となります。

提供価値拡大の方向性

4.SCMの「守りの目的」を考える

「守りの目的」は、モノ(提供価値)を供給するプロセスに対するアプローチです。この「守りの目的」を、「サプライチェーン全体の生産性向上」と「“持つこと”のリスク低減」に分けて設定します。
チェーン全体の生産性向上
サプライヤーから顧客までを一つのプロセス(チェーン)で捉え、効率性、生産性を追及する。(従来の生産性は、現場の生産性向上、直接原価中心の原価管理、などの部分的な生産性である)
“持つこと”のリスク低減
サプライチェーン全体の、無駄な総資産を圧縮する。


「チェーン全体の生産性向上」では、部門間の業務過不足の是正、サプライチェーン全体コスト(間接/直接)を対象にしたコスト管理から、最適地生産、最適地調達などチェーン全体の最適アロケーションまで、資源の生産的活用の視点より様々な目的が設定されます。
「“持つこと”のリスク低減」では、需要への連動、必要量の調達、不得意分野や競争力のない分野への投資削減など、現存のサプライチェーン内だけではなく、新たに構築するサプライチェーンの自社の位置づけを設定し、何を持ち何を持たないかを明確にして、目的を設定することが必要です。

守りの目的の設定

5.SCMで成果を得るために

「攻めの目的」のフレームは、ドラッカーのいう“会社がなすべきこと”の、①現在の事業の業績向上、②機会の追求、③新規事業の開拓、と対比させることができ、企業の環境変化への適応を示しています。
●提供価値の向上⇒ ②機会の追求
●提供価値の拡大⇒ ③新規事業の開拓

(①現状の事業の業績向上は、「守りの目的」を策定することで実現される)
また、「守りの目的」のフレームは、
●チェーン全体の生産性向上⇒ 利益を生む
●“持つこと”のリスク低減⇒ 総資産を下げる

と考えられ、これはROA(Returnon Asset)を向上させ、総合的な収益性を上げることに他なりません。
ROAの定義

これらより、SCMは、経営戦略の本質とも言うべきマーケティング -市場に対して、必要とされるものを創造し、供給すること- を実現化するための取り組みと捉えることができ、これら4つのフレームで目的を設定することで、経営戦略に直結したSCMの目的を設定することができます。そして、経営戦略に直結したSCMの目的を設定することが、実現化した時の成果を得るための必須条件となるのです。

SCM改革の概略図


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源流から攻める設計改革~「売れて儲かる」受注設計生産型製造業

1.はじめに

受注設計生産型製造業とは、工作機械や電子部品製造装置などの設備機械産業のように、個々のお客様の要求仕様に基づいて受注都度、製品の一部を個別設計したり、事前準備された派生品やオプションの中から選択して組み合わせたりして製品を実現して、お客様に提供するようなタイプの製造業です。ものづくり日本の技術を支え、日本の景気回復の鍵となる、非常に重要な産業です。

しかし、近年のお客様の要求の多様化に伴い、個別対応の幅、量が広がったため、

・お客様毎の仕様決定プロセス、タイミングが大きく異なる。また、変更も多く、社内の標準業務プロセスが確立しない
・お客様の生産設備を扱うため、納期要求が厳しく、遵守のために生産性およびコストは度外視せざるを得ない
・結果的に、膨大な在庫、仕掛を抱えて生産する

ため、「売れても儲からない」仕組みになっているのが実情です。

「売れて儲かる」ためには、お客様からの要望に対して、タイムリーな生産/調達計画を立案し、それを計画通りに遂行して、必要な製品やサービスを提供するような業務プロセスの構築が必要です。
ただし、業務プロセスを構築することはできても、お客様の要望が単一でない中でそれを遂行するのは大変なことです。
そのためには、会社全体での取り組みが必要となります。

今回は、売れて儲かる受注設計生産型製造業になるためのアプローチとして、お客様からの要求仕様への対応を行い、「儲けのカギを握る設計業務」のアプローチについて考えてみたいと思います。


2.目指すべき「売れて儲かる」受注設計生産型製造業とは

「受注設計生産型製造業だから・・・」という既成概念にとらわれず、会社全体で解決する問題として、製品構成のみならず、設計開発業務プロセス、原価企画、原価管理、生産現場や生産物流など、様々な領域からアプローチすることが必要です。本稿ではそのうち、受注設計型製造業の悩みから設計業務に関する取り組みについてご紹介します。

「売れて儲かる」受注設計生産型製造業


3.受注設計生産型製造業の悩み

お客様は、自身の製品の競争力を確保するために、製品仕様だけでなく詳細生産方式までを含めた変更を納品直前まで行っています。そのため、受注設計生産型製造業にとっては、業務プロセス全般に渡っての変更対応が必要となり、「売れても儲からない」仕組みとなっています。

「売れても儲からない」仕組み


4.「売れて儲かる」受注設計生産型製造業になるために

製品戦略の位置づけに合った製品提供プロセスを明確にして、それにあわせた業務の改革を行っていく必要があります。
収益を得る方法としてオペレーションの優位性追求と技術力の優位性追求があります。今回は前者について考えてみます。

「売れて儲かる」受注設計生産型製造業になるために
◆検討すべき業務プロセスは多岐に渡ります。その中で、今回は設計業務を中心とした取り組みついて説明します。


5.スピードとコストを考えた場合の設計の現状は

現状の設計業務は多様な顧客要求に対応する為に都度設計を行ってます。その結果、いつも同じモノでないためにスピードとコストを重視した製品供給が困難になります。そこで考えられる手段として都度設計を減らす活動が重要になります。

現状の製品提供プロセスの概要
次項では都度設計を減らす為に設計業務としてどのような取り組みが必要か説明します。


6.設計業務の取り組み

設計業務としての取り組みは製品戦略に基づく対象を明確にして、スピードとコストを重視した良いモノを繰り返し使える製品の設計が重要な考え方となります。

設計業務の取り組み

◆設計業務の取り組みはいずれも重要な役割を占めておりそれぞれの活動がリンクしています。本稿では標準化活動のポイントについて説明します。


7.標準化活動の概要① 標準化活動の目指すべき姿

市場やニーズに対して標準設計を行い都度設計領域を限りなく少なくすることにより製品を標準ユニットの組合せと若干の都度設計品を対応させる事ができます。活動の狙いを明確にして標準化活動を行うことにより短納期で安く、品質の確保された製品を顧客に提供することが出来ます。

目指すべき製品提供プロセスの概要


8.標準化活動の概要② 設計標準化活動の検討例

設計標準化活動のポイントは、市場に立脚した商品構成企画を基に迅速に幅広く対応出来る製品体系(ベース、オプション、アタッチメント、個別対応)を整理することです。さらに製品提供プロセス視点の検討等、多面的な活動を統合マネージメントすることが大切です。

設計標準化活動の検討例



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受注設計製品の標準化をどう進めるか

1.はじめに

受注設計製品は、商談を通して最終仕様を決めていくため、ほうっておくと個別設計の山になりがちです。この問題について、「どのように標準仕様を決めたらよいか」について考えてみたいと思います。

これには大きく3つのアプローチがあります:

1)準標準品を認定する
過去の設計実績から、モデルとなる図面と部品リストを準標準に「認定」する
新たな案件は、認定された実績から近いものを流用し「差分」設計を行う

2)標準部品を整備する
汎用性とライフを意識して、標準部品を選定する
新規設計部分において、標準部品の利用率を上げる

3)モジュール化率を向上させる
モジュールを開発して、標準製品におけるモジュールの構成割合を増やす

受注設計製品とはいっても、大半は核となる標準品の改造であることが多いのですが、問題は、その変更管理の方法です。はじめに、この問題への対応方法について考えます。
また、受注設計製品におけるモジュール化は、そもそもモジュールをどのように決めるのかが大きな課題です。3では、これに対する考え方の一例を示します。


2.受注設計製品の標準化が進まないわけ

受注設計製品の標準化が進まないわけ

上図にあるように、受注設計の案件では、たとえ過去に類似の事例があったとしても、担当する設計者が異なれば、実現方法も異なってしまうケースが多く見られます。
都度の設計を前提としているので、他人の蓄積から類似事例を検索・引用するよりは、自分でさっさと設計を始めてしまった方が、担当者本人としては楽だからです。
しかしこれを野放図にしておくと、設計者個人毎に「自分しか使えない蓄積」が構築されてしまい、部品や工程の標準化が進まないどころか、製品の品質まで、設計者毎にばらついてしまう、由々しき事態となります。
このような事態を避けるため、多くの企業では標準図を定めて、そこからの流用設計を促していますが、努力レベルで終わっているのが大半です。流用設計の結果はあくまでその場限りで、次からは再び標準図に立ち戻るやり方では、設計者自身にメリットが感じられないからです。


3.個別の設計結果も再活用する

そこで、これでは設計者の個人蓄積になっていた個別の設計結果を、組織として再活用することを考えてみてはどうでしょうか。
それには過去の設計結果を、①手配実績(取引先・価格・納期)とセットで蓄積し、②営業担当者にも公開することがミソです。
受注設計製品では、出図後の部材手配が、全体の納期や品質に大きく影響しますが、一度でも手配実績のあるものは、価格・納期の見積を立てやすく、取引先との交渉も楽です。QCD全てに良いことは営業担当者にもわかりますから、類似受注・リピートを意識した受注活動が進むようになります。設計担当者にしても、価格と品質が最初から読めるのはありがたく、引用元との差分に留意しておけば、取引先との打合せを含め、設計時間の短縮を期待できます。

個別の設計結果の再活用


4.関連する実績を紐づけて蓄積する

受注設計の結果は、商談情報を営業、図面や仕様明細を設計、調達価格を調達と、バラバラで蓄積されていることが多いと思います。その際、営業と設計以降との管理番号体系が異なるのはよくある話ですが、問題は、相互に直接参照する術が殆ど用意されていないということです。
相互参照を可能にするには、蓄積の際に共通のコードを振っておく必要があります。
その上で営業担当者が共通コードを意識し、今回商談との要件差異の形で設計に伝える、この商談サイクルを繰り返すことによって、本当に再利用の進む蓄積が行われます。

関連する実績を紐づけて蓄積する


5.通常構造とモジュール構造との違い

通常の製品は、「型式 =基本部分+オプション」の標準構造を取り、①型式の決定→②オプション選択、の順で仕様が決定されます。
この場合、顧客要件の違いはオプションでしか吸収できませんから、その範囲で対応し切れない場合は、近い型式を選んで改造することになります。その場合、たとえ改造箇所が一部であったとしても、製品全体のアライメントを取る必要が生じ、これが設計者の大きな負担になります。更に改造は、設計者の独自仕様に陥りがちなため、部材の手配も、製作工程も個別対応になってしまいます。
通常構造

モジュール構造を持つ製品は、「ベース部位(不変)+モジュール部位(選択)+都度設計部位」の構造を取ります。
すなわち、型式のみで製品の機能構成が決まるわけではなく、モジュールの組合せによって、同じ製品でありながら、機能と構成が大きく変わります。
またモジュール構造の特徴として、組合せの結果が所定の性能品質を得られるよう、プラットフォームという共通のインタフェースルールを設定します。このルールに従う限り、モジュールの独立性が保証されるので、新たに追加する場合も、他の部位とアライメントを取る必要はありません。
ベース部位とモジュールは標準化されているため、これらについて規模の経済が追求できることは、言うまでもありません。
モジュール構造


6.受注設計製品におけるモジュールの決め方

モジュール型構造を持つ製品は、パソコンなどの見込生産品に多く、これらは開発段階で演繹的にモジュールが設計されています。
それに対し、受注設計製品では、過去の設計結果を分析して、帰納的にモジュールを決めるのがよいと思われます。
ある部位に着目して、個々の設計の起点である、顧客の要求仕様を横軸に、個別の設計により実現した機能を縦軸に取ると、左上図大小の円プロット(実際には不定形)のようになります。
また要求仕様の出現頻度を縦軸に取ると、充分なサンプル数下においては左下図のようになります。
そこで
 
1)出現頻度を元に、モジュール化の仕様範囲を決める
2)その範囲を幾つのレンジで区切るかを決める
3)区切ったレンジ毎に個別のモジュールとする

の順序で検討を行うことにより、受注設計製品においても、モジュールを決めることができます。
※なおこの方法では、最初に対象部位を決めてから、検討を始めています。すなわち、この部位と他とのインタフェースを変更しないことが前提であり、これがプラットフォーム定義になっています。

受注設計製品におけるモジュールの決め方


7.モジュール展開レベルを求める

特定の部位に着目すると言いますが、実際にはモジュールを展開する製品構造のレベルを、どのように求めたらよいのでしょうか。

一つの例をご紹介します:

1)対象の製品を選んで、VE(Value Engineering)手法を用いて、製品の機能体系に展開します。これと製品構造とを対比させて、左図のような「機能-構造図」を作成します。

2)通常、機能と構造とは「多対多」の関係になりますが、これを「機能が1なのに対し、構造が多または1」となる、機能がこれ以降変化しないレベルまで、機能と構造のそれぞれについて展開をしていきます。

3)もはや機能が変化しないのに、構造を変化させても意味はありません。機能の変化が無くなる箇所に対応する、製品構造のレベルを見つけ出し、これをモジュール展開を行うレベルと定めます。

4)このレベルにおいて、機能の変化に応じたバリエーションを持てば、代替モジュールとなります。

モジュール展開レベル


8.モジュールバリエーションの整理

モジュールバリエーションの整理
モジュールのバリエーション展開は、どのように考えたらよいでしょうか。
顧客の要件は、機能に関するものであったり、方式や作動条件に関するものであったりするので、これが区別できるレベルまで、製品の機能展開を行っておきます。
その上で、製品の機能と構造を対比させた上で、過去の設計実績から「同じ機能/方式/動作条件でありながら、構造・材質・形状が異なる」ものをカウントしてみると

1)①の部品は、明らかにバラエティが多過ぎるので、この整理が考えられます。
2)同じ機能を構成する部品②③は、もともと同じユニットに付いているので、この統合が考えられます。


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経営改革、業務改革、現場改革、システム実現支援などの総合的なコンサルティングを提供しています。特に製造業の現場に精通したコンサルティングに強みを持ち、SCM/CVM領域でのパイオニアとして認知され、また公益事業向けコンサルティングにおいても実績があります。

経営コンサルティング企業として、日本におけるSCM改革をリーディングしております。
また最近では、「X-Chain Mangement(エックスチェーンマネジメント)」という新しい経営手法を開発して、お客様の事業の成功に貢献しております。

【ホームページ】: http://www.jbc-con.co.jp/

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