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コストダウンにも部門の壁を越えた取組を

企業のコスト水準はコスト企画段階だけで決まるものではありません。例えば需給調整業務が製造部門の稼働率を左右し、原価差異を生むように、日々のオペレーションがコスト水準を左右しています。企業活動のどのオペレーションがコストを左右するのか、部門の壁を超えた追及、対策が求められています。

1.部門別のコスト追求の限界

部門別のコストダウン活動が、必ずしも全体コストを低減していない例が見受けられます。

《たとえば》

例①
部門別にコストダウンを追及していくと、部門間のトレード・オフになることもあります。
部品の材料費削減を狙って、『軽く・短く』を、設計は、個々の製品単位に追及しがちです。しかし部品の品種数の大幅な増加で、生産では、設備の段取回数、確認工数等の工数増加を招きます。また調達でも、品種増に対する管理工数の増大に繋がり、そして不良発生というロスコストになることもあります。

例②
受注設計型製造業では、コストダウン活動の成果がなかなかでません。一品料理で、何がくるかわからず、受注が決まれば、顧客の仕様・納期変更により、変動要因が多く、納期・品質優先で、部門別にコストの目標を設定しても、なかなか守れません。また目標値が適正か否かの判断も、つけづらいところです。

特に多品種少量生産時代では、機種の切替、計画台数の未達成、混流生産/物流によるロスの発生等、ロスコストの発生要因が複雑になっています。全体視点からのコスト追及が求められます。


2.全部門で製造供給コストを追及するためには

1)製造供給コストが決定されるメカニズムを知ろう !

実際のコストは多面的な要素で変動します。

原価計算で捉えられるのは、直接費、間接費、販管費といった費目別分類です。市場は日々刻々と変化しており、実際の原価は、生産する製品の機種構成(プロダクトミックス)やその生産数量(ロット数)の変動により大きく変化し、ロスが発生します。
また業務プロセスの環境、たとえば自社加工⇔外製加工や国内調達⇔海外調達でもロスが発生する要因が潜んでいます。
SCM視点の製品供給コスト
いろいろな製品が同時にプロセスを流れることで、また長いプロセスを通過することで、ロスが発生します。このロスのない効率の良いオペレーションを考える必要があります。すなわち設計、生産、調達、物流のメンバーがそれぞれ決められた役割を果たして、製品供給コストの動的なコントロールを実施していくことが重要です。

2)対策のしやすい製品供給コストの捉え方にしよう!

(1)変動する製品供給コストは以下のように捉えます。

変動する製品供給コスト

(2)これを構造的に捉えるためには、たとえば以下のような体系で把握することができます。

製品供給コスト項目と効率定義


3.SCM視点からの製品供給コスト追及

捉えられた製品供給コストは、何で決まるのでしょうか。多くの項目は、多部門のオペレーションの総和で決まってきます。全体コストを下げるために、どの部門とどのオペレーションに何を対策すれば良いのか、この検討が重要です。

業務連携の製品コスト追及事例『儲けの構造の再構築』

このような形態から日々変動する製品供給コストを抑え込み、部門の連携で『儲けの構造を再構築する』ことが、真のコスト競争力の強化に繋がります。

今回は、SCM視点に立ったコスト追求の必要性、そのための業務プロセスに立った検討をすること、さらにオペレーションコントロールの出来るしくみと運営の必要性を説いてきました。特に日々、顧客のコスト追及にさらされている産業機械、受注設計型製造業で重要な観点ではないでしょうか。


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技術・ノウハウの共有による組織力向上

1.技術・ノウハウの共有の必要性

はじめに

いつの時代も、どんな組織でも技術・ノウハウが個人で閉じてしまい、組織で十分共有できていないのが実態ではないでしょうか。組織が抱える永遠の課題ではないでしょうか。最近では、文字情報だけでなく、ビデオなど視覚情報の形で将来に伝えることもできるようになってきています。ここでは、技術・ノウハウの継承の事例も交えながら、どうすれば少しでも組織で共有できるようになるかを考えてみたいと思います。
ここで、技術・ノウハウを組織で共有する目的を確認しておきたいと思います。本資料における共有の目的は、「組織力向上」です。以下の図において、個人Bのノウハウをその他の4人が習得することで組織の能力が、「a×b」になり、5人の能力の総和より大きくなり、シナジー効果を享受できるわけです。ここでポイントは、個人Bのノウハウを共有できるように、「技術化する」というステップが必要なことです。

企業における組織力向上のメカニズム


2.業務分類の定義

業務の分類

まず、組織内で共有しやすいかどうかの基準で業務を分類してみたいと思います。最もオーソドックスな分類はルーチン業務/非ルーチン業務の分類基準ではないでしょうか。なぜなら、ルーチン業務は比較的文書化、即ち形式知化できる一方、非ルーチン業務は文書化できない、即ち暗黙知化しやすいという特徴があるからです。非ルーチン業務の場合、文書化しても次いつ同じ業務が行われるのか分からないために、文書化する意味がないという側面もあります。

業務の分類


3.本記事の全体ストーリー

部門ごとの業務の違い

ルーチン業務と非ルーチン業務の比率は、部門によって異なります。例えば、経理部門はルーチン業務の割合が比較的大きく、営業部門や技術部門はルーチン業務の割合が小さいと言えるのではないでしょうか。ルーチン業務の割合が小さい部門ほど、技術・ノウハウの継承が進んでおらず、後継者の育成に悩んでいるものと推察できます。ここからは、営業部門を事例に、業務の実態や共有方法、共有の課題、その解決案を見ていきます。

本記事の全体ストーリー


4.営業部門の事例紹介

1)業務の実態

営業部門の業務

営業部門の業務をルーチン業務/非ルーチン業務に分類すると、およそ以下のようになります。

営業部門の業務


2)業務の共有方法と課題、解決案

営業部門の業務

営業部門の業務の共有方法、及び共有するための課題、その解決案を整理すると以下のようになります。

営業部門の業務の共有方法、及び共有するための課題、その解決案
(註) 映像による技術・ノウハウを共有化する取組み
・NECの技術継承支援システム http://www.nec.co.jp/solution/movsol/system02.html
・テプコシステムズのePower/K-SHOW http://www.tepsys.co.jp/service/k-show.html
・エムツーメディアの技術継承ビデオ制作 http://www.non-linearjp.com/ginou.html

3)ルーチン業務の共有

共有方法は、当然のことながら、技術・ノウハウを可視化して、共有するということになります。可視化の手段には、フローチャートやチェックリスト、映像化などがあります。以下のように、各社から作業を映像化するシステムが提供されています。同一の業務に初めて従事する人が、この可視化された技術・ノウハウを必要とします。先輩との簡単なOJTとセットで、技術・ノウハウ継承が容易に実施できます。
課題として挙げるとすると、可視化したノウハウが最新でないということでしょう。この解決策としては、ジョブローテーションなどで文書等を活用する頻度を増やすことくらいではないでしょうか。

ルーチン業務の共有

4)事例1:ベストプラクティス選定

ある企業でやられていた事例をご紹介します。営業プロセスに従い、元ベテラン営業マンのノウハウを整理して、ベストプラクティス構築した上で、現役営業マンが活用しながら、ベストプラクティスを改善している事例です。

ベストプラクティス選定

5)事例2:出し手と受け手の協力

短期間のOJTでノウハウを継承するには、ノウハウの出し手と受け手のそれぞれのモチベーションを如何に高めるかがポイントです。受け手は、自分がやらなければならないという当事者意識や目的意識を持つべきで、出し手は、受け手の実践をタイミングよくサポートして、受け手のモチベーションを維持させるべきです。

出し手と受け手の協力

出し手と受け手がモチベーションを高めて、ノウハウを共有することが重要であることは分かっているが、出来ないのが実情ではないでしょうか。それを促す、以下のような仕掛けが必要なのではないでしょうか。

出し手と受け手の協力2


5.最後に

継続することの重要性

ここまで記述したことは、当り前のことかも知れませんが、これらをどれだけ徹底して行うか、あるいは継続的に行うかが技術・ノウハウの共有のポイントではないでしょうか。
例えば、ベストプラクティスのポイントをどれだけ抽出できたか、あるいは実践を通じて、どれだけポイントを見直したかが重要なのではないでしょうか。100%の技術・ノウハウが組織で共有されることが目的ではなく、組織で共有することが会社の業績向上に繋がるという文化を作り上げることを目的に掲げるべきではないかと思います。全ての技術・ノウハウが共有されなくても、共有する場を継続的に設けることが重要で、「継続は力なり」と思えてなりません。
野中郁次郎氏他が書かれた著書「知識創造企業」の中でも、個々人の体験・実践、及び知識(技術・ノウハウ)の共有の場の必要性を主張されています。


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プロセス視点からの組織力向上

1.「組織」及び「組織力向上」の必要性

組織力向上の必要性

企業という形態が、人が集まりって、それぞれが役割を持って、ビジネス活動を実践する限り、「組織力の向上」は永遠の課題でしょう。いつの時代も、企業は「組織力を向上させたい」と考え、それによりビジネスを成功に導きたいと願っています。

「組織」の成り立ち

まず、「組織」という形態がなぜ発生したのでしょうか。職人が一人で製品を作っている時代には、「組織」という概念は不要でした。その後、産業革命により一人一人の役割を限定して、それを繋ぐことで、効率的に大量生産するようになりました。このとき同じ役割の人を括ることで、組織が生まれました。

「組織」及び「組織力向上」の必要性


2.「組織」の定義

組織の定義

最初の組織は、製品が出来るまでのプロセスを役割、あるいは機能別に分割したものでした。機能ごとに人を集めるとそのシフトや人員確保などを検討する管理者が必要になります。また、各機能が全体としてうまく機能させるために、経営者が必要になります。
上記のストーリーに従って、ここでは組織を「機能(作業)」×「役職(経営者/管理者/実務者)」と捉えて、「どのように組織力を向上させるか」を考察したいと思います。「機能」×「役職」は、「実行プロセス軸」×「管理プロセス軸」と言い換えることもできます。

組織の定義


3.「組織力向上」の考え方

「組織力」の測定方法

ところで、「組織力」とはどのように把握されるのでしょうか。例えば、「一人あたりの売上高」で評価することができます。この他にも評価指標は存在しますが、突き詰めると、以下に集約されます。

「組織力」の測定方法

「組織力向上」の基本的な考え方

組織力(ビジネス活動のI/O比率)を向上させるためには、組織の定義で用いた「実行プロセス軸」と「管理プロセス軸」に着目することで、次の3つの方向性が考えられます。

「組織力向上」の基本的な考え方


4.「組織力向上」を実現するための施策

「組織力向上」のための施策

前述の3つの方向性をどのように実現すればよいかを、より具体的に考察したいと思います。

「組織力向上」のための施策


5.組織設計の考え方

プロセス視点からの組織設計

事業の本質はモノ、及び情報の加工&伝達など業務の繋がりであり、各業務の繋ぎ目によく不具合や無駄・無理が発生します。業務効率の最大化に着目して、組織設計をする場合、一連のプロセスをどこで区切るか、換言すれば管理者の責任範囲をどこまでにするかを決定することになります。区分の考え方として、弊社では「Xチェーン(後述)」という枠組みを提唱しています。

プロセス視点からの組織設計

Xチェーン視点の組織設計

弊社が提唱する「Xチェーン」を基軸に組織設計をご紹介したいと思います。
Xチェーンでは事業を「デマンドチェーン」「エンジニアリングチェーン」「サプライチェーン」そして「サービスチェーン」の4つから構成されると定義しています。(2009年6月3日「組織力向上を目指したXチェーン・マネジメント(XCM)」参照)トレードオフ関係にある情報(例えば、需要と供給)をできる限り集約するという考え方に基づいたとき、これらのチェーン単位が大きさの面、業務効率の面から妥当であると考えています。また、それぞれのチェーン間の繋がりをスムーズになるように、チェーンの役割を明確することで、本部レベルの組織設計ができます。本部内の組織構成も同様のトレードオフ情報の集約という考え方に基づいて、設計することができます。

Xチェーン視点の組織設計

企業を超えた組織設計

ここまでは、一企業の中の組織設計に関して記述してきましたが、当該企業の役割が決定していることが前提でした。実際には、部品などを自社が生産するのか、外部に委託するのかなど、その企業の果たす役割で組織が変わります。また、外部と言えども、グループ会社の場合とグループ外の会社の場合があります。これはグループ経営のあり方(グループ全体設計)に関係します。企業の役割、あるいはグループ全体の役割を設計する必要があります。その企業、あるいはグループにとってのコア技術は抱え込んで、それ以外は外部に委託することになるかと思います。
サプライチェーンを対象に、企業のインターフェイスを設計例を以下に示します。

企業を超えた組織設計


6.最後に

ここまで、「実行プロセス軸」と「管理プロセス軸」の2つから組織を捉えて、それぞれの軸に着目して、「組織力を向上させる」ことを考察してきました。製造業の模範である「トヨタ自動車」においても、戦略として、「経営戦略」「現場戦略」の他にそれを繋ぐ「部門戦略」を設定することで、事業環境の変化に追従できる強い組織を作り上げています。(【参考1】参照)
事業の戦略を立てる経営者、現場の効率化を実現する実務者、それらをシステマティックに繋ぐ管理者の3層から組織は成り立ち、特に管理者の実力が事業の成否を左右する程重要です。管理者は、実務者に確実に業務を遂行させる能力と事業を成功させるための戦略を検討する能力の両方が必要です。是非、優秀な管理者を育成して、強い組織を作って頂きたいと思います。
東洋経済新報社から出ている「組織力を高める」(【参考2】参照)では、組織力の鍵を握る管理者(マネージャー)に焦点を当てて、組織力を「遂行能力」と「戦略能力」の積と捉え、強い組織とはどういうものかを解説していますので、参考になるのではないかと思います。

【参考1】日経ものづくり2004年7月号 「なるほどtheメソッド」 p.164-p.167
【参考2】古田興司、平井孝志共著「組織力を高める」 東洋経済新報社 2005年2月24日発行


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グループ一体型経営へ事業構造を改革しよう

1.はじめに

昨今、経営戦略として「グループ経営」を打ち出す企業が目立つ。私どもがお世話になっている会社でも2社でこの議論が進められています。
1960年代、日本の企業は膨張期を迎え、経営多角化・分社化が進み、グループ企業が誕生しました。その後開放経済体制の移行という大きな時代の流れの中で、企業グループとしての国際競争力強化の必要が高まり、一気にグループ企業化が加速していきました。
アジア諸国の企業が躍進し、日本企業の競争相手にまでなった現在、多くの一般企業はそれまでのグループ化のあり方の見直しを迫られ、現在のグローバル市場経済に合致した基本構造への変革を進めつつあります。
今から10数年ほど前に、ある企業のAV事業部門のお手伝いをしました。AV機器は急激な技術革新を繰返している事業であり、競争も最も激しい業種です。その企業は地方に本社を置き、その地方に多くの外注企業を抱えていた為、それを海外に切り替えるのは、特に外注企業側からの反対論や抵抗が強かったこと、及び高級品を「商品」としていた為、品質がクリアできるかという2つが議論の的でありました。
結果として、世界市場価格と競争していくにはそれしか方法がなく、現地部品調達に踏み切り、いくつかのトラブルはあったものの、数年を待たず品質もトラブルもクリアし、更には当時のマレーシアから今は中国にまで生産が拡大しています。必要に迫られた企業は変革を進めてきたのです。
電力や鉄道等の公共系企業も規制緩和の流れの中で「競争」概念が導入され、コスト競争力強化活動に取組んでいます。この活動を進めている当事者は、「グループ企業」(公共系企業では、汎用性のある部品製造や工事は大半をグループ企業に発注している)の存在が高コストを発生させている要因の一つだということを気づいています。この状況は公共系企業だけでなく、大手の一般企業にも見られるようです。どの企業も親企業からの天下りや、経営者・管理者の派遣、出向の型をとっており、これがコスト水準を引き上げ、競争力を阻害していることは明らかですが、人事問題や経営問題が絡み、取り組みを難しくしています。
今こそ、この構造改革に正面から取り組む時期だと思います。


2.組織と分業

この問題への取組みは、組織とは、役割とはの原点から考えるてみることが必要です。
鉄道、電力、ガス、通信等の「生活の基盤を提供する公共系インフラビジネス」では、事業の拡大につれ、機能別分業が進み、更にその中で水平分業が進んで、上流は親、下流は子供という型のグループ企業経営へと進み、現在の分業形態になっています。この分業形態は、高度成長期には極めて有効に作用し、親企業の新陳代謝にも極めて有効に働いてきました。ところがそのインフラを使って事業活動をしている事業体の海外進出や、労働人口の減少等の社会現象が進行するにつれ、需要と供給のバランスが崩れ始めました。この結果、競争が始まり、規制緩和の流れと相まって、コスト競争力をどう高めていくかが喫緊の課題になっています。一方で親から子へ、子から孫へと移転され「分散」されてしまった「技術力」を今後どう確保していくかという問題も極めて大きな問題になっています。同様の問題・課題は、前述したように、一般企業においても(特に大企業において)、程度の差はあっても、まだ未解決のままになっている姿を見聞きします。
これからの「グループとしての事業のあり方」が改めて問い直される「今日」を迎えている訳です。

今までのグループ会社化(子会社化)と分業化の流れ


3.グループ一体型経営の再構築活動のあり方

★グループ一体型経営を実現するポイントは、グループ内での役割分担を合理的に行うことにある。そのためには、事業構造レベルから見直すべきである。

前述したように、この命題を取り組むには、現状から出発したのではあまりにも障害が大きいと思います。企業活動の原点に立ち返り、ゼロベースで事業構造を見直すことから出発すべきです。
これからのビジネスは、好むと好まざるとに関わらず、グローバル市場を対象に顧客視点で、事業構造そのものを再設計する必要があります。これは公共系企業に関わらず、すべての事業に共通の命題です。まずは対象事業のビジネスモデルを研究し、明確化する必要があります。
ビジネスモデルが固まれば、次は事業プロセス設計の設計です。そして、それを支える事業構造を設計するという手順で活動を進めることが肝要です。この中で、グループ企業の位置付けや役割が固まってきます。
To beモデル(狙う姿)が決まったら、現状からそこへ至るステップを検討し、そのステップ単位に課題(現状とあるべき姿とのギャップ)を明確にして、その具体化を企画し、実施移行計画をたて、推進体制を確立して粛々とそれを実行していくという、演繹型のアプローチをとり、しかもビックバン型で対応するのではなく、ある程度の時間を取ってやれるところから改革を進め、次第に加速していく進め方を採用すべきでしょう。何十年もかかって作られた構造ですから、それなりの処方箋が必要だと思います。
この改革の基本は、「人材開発」をグループ経営活動の最重要コンセプトにおくことではないかと私は考えています。グループ経営を単なるコストダウン策と捉えている限り、解決策を見出すのは難しいのではと感じます。以下に、上記の考え方をベースにした「グループ一体型経営体制への変革活動の企画段階(プラン作り)」の活動の進め方を示してみました。参考にしていただければ幸いです。


4.グループ一体型経営の変革活動(企画作り)の進め方

(1)何をグループ経営で狙うのか

これからの「グループ経営」のあり方を考える原点は、「縦の関係」から「横の関係」への考え方の変換⇒(結果として「分業」と「役割分担」の考え方の見直しにつながる)、更には「人材開発の仕組み」ではないかと考えます。かつては「人」「もの」「かね」が経営の三要素といわれ、その後「情報」が加わりました。その後、「東西問題」も「南北問題」も解消して世界の市場が一つになり、グローバル市場経済が形成され、ものより無形の価値が競争の源泉となり、「人材」こそが「第一の経営資源」に変化しました。この現状認識を基本にグループ経営の目的を定義することが、活動のスタートです。
そもそも「グループ会社化」の目的は、大きく次の5つが挙げられます。

(1)事業運営の効率化(スピード・小回り性)
(2)賃金水準を下げることによるコストダウン
(3)親会社の人事上の動脈硬化の解消
(4)グループ全体としての能力開発(違った仕事の場を与える)、経営者の育成
(5)社員定年後の就職先の確保

これら目的のうち、成熟期を迎えたこれからの状況を考えると、(3)や(5)の、親会社の一方的な都合目的は今後見直していくべきです。「グループ一体で競争力を磨く」という上位目的に照らせば、(1)(2)(4)、特に(4)が極めて重要な意味を持つと考えます。分社化の中でも、例えばトヨタグループにおけるデンソーのように、親会社にない「電装部品という専門領域での技術」を持ち、企画から開発、生産、販売までテリトリーを広げて、親会社の庇護がなくても十分に市場競争に伍していく力のある企業と、業種上、中核企業の「Do業務」のみを請け負っている会社では、おのずと生き方、生かし方が違います。まずは、数あるグループ企業を層別分類し、デンソータイプの「A型企業」、企画や設計を中心に行う「B型企業」、ものの調達や生産・工事を行う「C型企業」のように分けて、それぞれの保有資産(特にコア技術、コア業務)を明確にし、グループとしての生き方、それを受けた子会社としての生き方を明確にして、これを基本とした「役割分担」を再定義することがグループ経営体制再構築の第一歩であると思います。何をグループ経営体制の核とするか、この命題に対する考え方を、まずはこの事業に関わるグループ企業が集まって、真剣に議論すべきでしょう。


(2)事業プロセス&役割の設計

ビジネス・プロセスが固まれば、次にグループ企業全体を対象にした「価値提供プロセス」を設計し、役割配分を決めて、一体化した情報の流れや個々の業務機能をゼロベースで再設計します。このプロセスにおいて重要なポイントは、グループ企業や、このプロセスに関与するプレーヤーの「提供価値(コアの機能)」の明確化です。「その機能はどこが担うべきか」を、「現状ベース」ではなく、「今後の狙う姿」として設定し、役割設計をしていくことです。過去の経験に照らすと、このプロセスの成功のカギは、「現事業活動を以下に正しく把握できたか」に尽きると思います。そして、自企業(中核企業)領域だけでなく、サプライチェーン全体の最適化を考えて設計することがポイントです。

成熟期の分業ロジックの設計


(3)事業モデルの設計

事業単位のグループ企業の位置付けが決まったら、次にその上で、事業単位の狙う「事業モデル」を設計します。JBCが主張する事業モデルの設計については、別途その理論を述べたものがあります。その概要を下に示しました。ビジネスモデルの設計は、事業のスキームを決める極めて重要なプロセスです。その事業が対象にしている「市場」の特性や、「業界特性」「生産特性」等々を前提に、以下に示した4つの要素を設計します。このプロセスで事業の概念が固まり、「事業のコア」も見えてきます。

ビジネスモデル(事業モデル)とは

次に、現状と狙う姿のギャップを「課題」として定義し、解決策を構想して、その解決にかかるパワーや解決時期を見積もり、「狙うプロセス」に至るステップと時系列も考えてシナリオ化します。これが実行計画です。そして、体制を整備し、フォロー管理の仕組みを構築して「To be事業モデル」実現へs轍鮒を進めます。以上の検討プロセスをまとめると以下のようになります。

グループ企業体制再構築の進め方(ラフスケッチ)

今回は、「グループ企業体制再構築」の概論にとどめます。このテーマは今後も実コンサルチィング活動を通し、深耕して行くつもりです。活動を通して、理論化・整理が進めば、続編を紹介できると思います。


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経営改革、業務改革、現場改革、システム実現支援などの総合的なコンサルティングを提供しています。特に製造業の現場に精通したコンサルティングに強みを持ち、SCM/CVM領域でのパイオニアとして認知され、また公益事業向けコンサルティングにおいても実績があります。

経営コンサルティング企業として、日本におけるSCM改革をリーディングしております。
また最近では、「X-Chain Mangement(エックスチェーンマネジメント)」という新しい経営手法を開発して、お客様の事業の成功に貢献しております。

【ホームページ】: http://www.jbc-con.co.jp/

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