fc2ブログ

標準化の観方&考え方

1.標準化の概念

「標準化(standardization)」を辞書で引くと

①標準に合わせること、または近づくこと
②工業製品などの質・形状・大きさなどについて標準を設け、それに従って統一すること

とあります。

そもそも「標準」とは何か。これも一見分かっているようで、人に聞かれると明確に定義しにくいものです。私は「標準」というのは、「今まで確立されたやり方の中で、一番良いもの」というくらいに理解しています。一般に、「標準作業」とか「標準仕様」「標準時間」という形で使われたとき、いろいろやり方がある中で、一番「平均的」「多く出現する」ものという受け止め方が多いと思いますが、これは誤った解釈だと考えます。たとえば「標準作業」というのは、一つのものを作るプロセスの各々の作業で、いろいろな手順や行動・動作の違ったやり方がありますが、その中で一番理にかなった良いやり方という意味です。標準時間は、そういうやり方で作業をし、ものを作ったり、何かアウトプットを産出する時の一番少ない時間(当然、それなりのアウトプット水準を満たしていることが大前提)のことです。標準仕様も、その製品の顧客要求を満たし、かつ最も合理的に考えて設定された仕様のことをいいます。
換言すると、「標準」とは「名人の技」を言い、「標準化」とは「標準」に合わせる、近づけることと定義できます。「標準化」は工場生産のもの作りの基本コンセプトの一つでもあり、事業活動においては、極めてプリミティブな概念であって、収益を生み出す原動力の一つといえます。


2.標準化の目的・狙い

標準化の目的(狙い)は、「品質の安定したものを、短い納期で安く供給する(QCDの確保)」ことにつきます。
この目的(狙い)が実現するメカニズムは、以下の図表の如くです。

ものの標準化の目的の体系図

前述では、「もの作り」における「標準化」の目的(狙い)ですが、「業務」「プロセス」においても(人の行動、事業活動)においても、まったくそのメカニズムは同じです。

業務・プロセスの標準化の目的の体系図

ここで注意すべきは「環境変化」です。ビジネス環境は常に変化しています。これにより顧客の要求が変われば仕事の仕方も変えないと、要求に応えられませんし、仕事を取り巻くその他の要件(技術の進捗、サプライヤ市場、人材市場、法規制 etc.)が変われば、変化を余儀なくされます。定期的にチェックし、必要に応じ標準を変えていくことが必要です。これは「もの作り」でも「業務プロセス」でも同じです。


3.標準化を検討する単位

「もの作り」(モノ)も「業務・プロセス」(こと)も、それぞれに構造を持っています。標準化を考える「対象」を丸ごと標準化検討できれば、これが一番効果が大きい訳ですが、なかなかそうもいきません。
「対象」は一般的に「構造」を持っており、その構造要素の中で、他の与件が変わってもあまり影響を受けない部分と、敏感に影響を受ける「部分」があります。これらを見分けて、標準化を検討することが肝要です。
「もの」については、(参考1)に示すように、「市場」「製品」「製品構造」の3つの「ディメンション」での関係を検討してみると、どの単位で検討すべきかのヒントが得られます。
「こと(業務)(プロセス)」については、「もの」のように構造でつかまえにくい対象ですが、「サプライチェーン協議会(SCC)が提唱している業務プロセス記述ツール「SCOR」を使って業務プロセスを記述すれば、構造的表現が可能です。なぜなら「SCOR」は「レベル1」「レベル2」「レベル3」「レベル4」のように、業務の固まりを「大きなくくり」「中くらいのくくり」「細かいくくり」と階層性を持たせて記述するツールです。((参考2)参照)
業務の場合は、業種・業態(事業特性)や、企業の文化・慣習によっても業務の内容・手順やルールが変わり、個人差もあるため、「大きなくくり」レベルで標準化するのはまずないと思います。JBCでは、業種・業態毎の「レベル3」までの「業務テンプレート」を過去のコンサル経験から整備しておりますが、「システム化」「ツール化」の対象は「レベル3、4」以降が対象となるのが一般的です。


(参考1)標準化を検討する単位(もの編)

標準化を検討する単位(もの編)


(参考2)SCORの構成

SCORの構成


4.標準化を検討する考え方

■標準化を検討する考え方は以下のように整理できます。
(基本)標準化 = あるやり方(業務)、技術・仕様に統一・集約すること

標準化を検討する考え方


5.整理・まとめ・標準開発に使える手法

標準化・共通化を推し進める際の固有の手法はありません
    ↓
既存のCD手法(VE ⇒ 製品のCD手法)等をアレンジして活用することで活動効率を向上させる/標準化原資を発見しうることができます

ここでは「モノ」についての手法の例を紹介します。

ものの標準化のための手法一覧


6.標準化を成功させる要件

モノもプロセスもできるだけ標準化して事業のプロセス上に乗せることによって、効果の最大化を狙うスタンスが事業活動の基本となります。そのためには、標準と決めた製品を標準プロセスによって、予定通りの効果を得るように活動するべきであり、もし標準が予定通りに機能しないならば、機能するように標準そのものを修正することとし、標準を中心とするスタンスを崩さないことが重要です。

標準化を実現するための考え方


7.製品/モジュール/部品の標準化(取組の手順)【モノの標準化】

ものの標準化の範囲と取組み手順


関連商品:「設計・生産改革」コンサルティング
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STC06.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048/019/

困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html

コンサルティングのお問い合わせ先
bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください
スポンサーサイト



【theme : 経営コンサルタント
【genre : ビジネス

ビジネスモデルを起点に考えるプロセス改革 その5

ビジネスモデル思考が欠かせない!

この連載も今回が最終回となる。常に顧客に支持され、勝ち続ける企業であるためには、ビジネスプロセス改革を通じた「事業構造改革」が求められている。これまでの連載で、事業構造改革を実現するための考え方や改革実践方法を述べてきた。
しかし、手法を知っただけでは不十分だ。手法は、事業の「どこを変えなければいけないか」を教えてくれるわけではないからだ。そもそも企業が抱える経営課題は、1つとして同じパターンはないはずである。経営課題を自ら見つけ出していくことが改革の原点であり、そこにはビジネスモデル思考が不可欠だ


■求められる顧客視点のビジネスモデル思考

連載第2回で、ビジネスモデルの変革を導く4つの観点:①誰に(市場/顧客)、②何を(提供価値)、③どのように届けるか(価値提供プロセス)、④どのように儲けるか(収益方法)について述べた。このなかで製造業にとって最重要なのが、①誰に(市場/顧客)である。読者は「顧客ターゲットなんて今さらいわれなくても常に意識している」と違和感を覚えるかもしれない。

競争力のあるビジネスモデルの構築は顧客視点のBU(ビジネスユニット)から始まる

ここでいう「誰に(市場/顧客)」とは、戦略的なBU(ビジネスユニット)として市場/顧客を、どのような単位で分けるかということである。日本の製造業の多くは、事業部制やカンパニー制のもとで組織を分けているが、そのほとんどは製品の視点である。確かに製品グループごとの組織では、原価低減など事業効率を高めるための手は打ちやすい。半面、同じ会社であっても他のBUのことはわからない、といった個別最適思考に陥りがちである。結果として顧客対応においてはBUごとに販売戦略が練られ、高コストな営業活動が展開されている。ときとして、同じ顧客に複数の部門がアプローチする混乱も起こる。
製品ありきで売り方を考える経営が通用していた時代であれば、これで良かったのかもしれない。しかし、今や事業環境は日々変化している。「顧客ニーズ」や「社会情勢」、「競争相手」もどんどん変わっていく。このような時代において製品視点のBUは、顧客対応の柔軟性に欠けるといわざるを得ない。
製品視点から顧客視点へとBUの視座を移さなければならない。消費財であれば「品質重視派」「環境こだわり派」、生産財であれば「高稼動顧客」「信頼性重視顧客」など、BUの分け方は無限にある。このBUの設定がビジネスモデルを大きく左右するのだ。顧客視点でBUを設定し、BUごとのビジネスモデル、ビジネスプロセスを再構築することが、多くの製造業で求められている。


■ビジネスモデル思考の集団を育てる

ビジネスモデルの検討は誰が行えばよいだろうか。製造業は顧客視点のBUをどう定義づけ、またBUの単位ごとに、先に述べた「何を」「どのように届け」「どのように儲けるか」のビジネスモデルを、どう組み立てればよいのだろうか。これは非常に難しい作業である。なぜならば、1つのBUに対して複数の製品やソフト、サービスをミックスしたビジネスモデルを考える必要があるからだ。こうなってくると、部門ごとの発想では成り立たない。
また、この顧客視点のビジネスモデルは、顧客にとってのベストを追求するあまり、高コストなプロセスになりやすい。このため、BUごとのベストな組み合わせを考えながら、一方でBUを超えて共通化できる製品やサービスを工夫する、という戦略的思考が必要になる。
さらに、ビジネスモデルは新しくつくったと思った途端、陳腐化の運命を辿っていく。つまり、常につくり変えていく必要があるのだ。これを企業の営みとして定着できるか__これからの企業に求められる最重要課題ではないだろうか。
ある企業では、合宿形式の集中検討を定期的に行うことで、この課題に立ち向かおうとしている。部門横断的に人材を選出し、事業環境分析を皮切りにこれからのビジネスモデルを設計し発表する。社員の経営マインドを高め、部門を超えた全体最適思考を促し、会社の将来を自分の問題として考えていける人材の育成を狙ってのことだ。年に数回、会社の研修制度に組み込んでいる例もある。


■常に前進する企業となるために

ビジネスプロセスは時代とともに変わる。顧客の要求は厳しい方向に変わる。競争相手も変わる、これも競争がラクになることはない。そもそも、誰に支持されるために、何を武器に戦っているのか、前提となるビジネスモデルも変わる。
本連載の第1回で、「われわれは変化の時代にいる」と書いた。その表現は言葉足らずだったかもしれない。変化を求められる時代であるだけではない。変化し続けること自体が企業の必要条件となる時代である。リストラを発表することで株価が上昇する例は珍しくない。世の中は常に前進する努力を企業に求めずにいられないということだ。今、業績が良い企業よりも、前進を続ける企業がそのブランドを高める時代である。
改革に終わりがないのではなく、改革し続けることが本当の企業の力ではないだろうか。本連載のタイトルであるビジネスプロセスについていえば、常に自社のビジネスモデルを点検し、売れる・儲かるビジネスプロセスを再構築し続ける力が企業に求められる。
本連載を執筆したメンバーは、企業の継続的な改革基盤強化のためのコンサルティングを生業としている。今後も、企業が前進を続けるためのヒントを提供できるよう、研究を続けていきたい。


(「プラントエンジニア」2005/3月号(日本プラントメンテナンス協会)寄稿文より)


関連商品:ビジネスモデル開発研修プログラム
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STE02.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048023/

困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html

コンサルティングのお問い合わせ先
bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください

【theme : 経営コンサルタント
【genre : ビジネス

ビジネスモデルを起点に考えるプロセス改革 その4

事業構造・ビジネスプロセスのマネジメント

これまで2 回にわたって、事業構造の改革と、売れる・儲かるビジネスプロセスの設計方法について述べてきた。今回は、改革で意図したあるべき姿が、活動の終了後も折に触れて検証できる状態を、どう実現するかを中心に述べてみたい。


■管理可能状態をつくる

改革活動は、現状の把握と分析から始まる。しかし多くの場合、現状を分析しようにも、何を基準にして善し悪しを判断するのか不明確であったり、ヒトによって異なったりすることがあるのではないだろうか。
そうならないには、事業構造/プロセス構造を可視化して、誰もが同じ姿を認識できるようにしておく必要がある。ここでいう可視化とは、事業レベルから組織・業務・作業レベルに至るまでの管理可能な状態をつくり、その状態を維持できるようにする=基準に照らして評価可能であることをいう。
下図において、左側が管理可能状態の実現手順であり、右側が管理可能状態を維持する仕組みである。左側の1・2は前回までで触れたので、ここでは3・4、および右側のa~dについて解説する。

事業構造の可視化とは管理可能状態をつくり・維持すること

まず、図中の3であるが、ここでは自社における各部門の役割と、部門ごとにどのような業務を行うかを定義する。たとえば調達部門を例に取ると、部門役割としては[処理]=発注伝票処理、納期追求、[調整]=クレーム対応、調達依頼に対する代替案の提示、サプライヤーとの調整、[企画]=サプライヤー開拓と指導、汎用部品化率アップ、材料コストダウン企画__などが考えられる(一般的に、役割には処理・調整・企画の3タイプがある。詳細は省くが、同タイプの役割は効率化のポイントが同じなので、これを意識して役割を整理すると何かと好都合である)。
部門の役割は、責任・権限とセットで設定されることが望ましい。調達部門の例に沿えば、[責任]:コストダウン結果、サプライヤー納期、サプライヤー品質、[権限]:標準部品の設定、サプライヤーの選定、材料調達価格の決定__といったところだろうか。これら役割と責任・権限を、重複や漏れのないように部門間において分担定義することがまず求められる。
そのうえで、自部門が担う役割を個別の業務に展開する。たとえば、営業部門における見積という役割を業務レベルへ展開すると、[見積要件確認・参考事例検索・出値決定・見積書作成・見積提示]といったものが考えられる。
営業戦略立案、受注、売上管理といった、営業部門のその他の役割も同様に展開することで、部門の業務構成を列挙しておく。このように業務レベルへ展開しておくと、業務の帰属部門が明確になるだけでなく、業務単位で部門間での授受=組替えが容易となる。これは、組織改正などにおいてたいへん都合がよい。
次に、業務の標準状態定義(図中の4)について述べる。処理系業務・調整系業務を作業フローの形で定義することはよく行われているが、それらを業務構成と紐づけた上で、体系的に整備しておくことを強く勧めたい。
その場合、担当者・手段・作業の留意点・標準時間などを、作業フローの『欄外項目として定義』しておくようにする。そうすることによって、単なる作業フローは業務マニュアル:マネジメントツールへと進化するのである。
なお、企画系業務の標準を定義することは現実的でないが、企画とはいっても多くは前例と一部が異なるだけである。そのため、周知伝達や結果集約などのコミュニケーション方法については、標準化しておくことが望ましい。


■管理可能状態を維持する

先に述べたように、管理可能状態を維持するとは、基準に照らして評価できる状態を保つことであり、図の右側がこれに当たる。
まず(a)だが、競争優位とは顧客に自社の提供価値を認知させ、具体的需要を喚起する一連の過程であり、その巧拙を評価できるものを選ぶ必要がある。具体的には、前回解説した差別化戦略とロックイン戦略に対する結果指標がそれで、「差別化戦略に対して:市場シェア、商談の勝敗率」「ロックイン戦略に対して:ブランドシェア、平均の総購入額、製品の平均単価」などが考えられる。
(b)としては、事業総コスト、受注から納入完了までのリードタイム、約束納期の遵守率などが考えられる。事業総コストは期間における実績値、リードタイムや納期遵守率のようなものは期間におけるモード値を用いて、評価することが妥当と思われる。
(c)であるが、まず役割定義の巧拙としての業務効率;生産性を評価する指標を選びたい。生産性の定義は各社各様だろうが、たとえば「部門生産性=処理業務量/部門総コスト」と置いたとする。ここで部門総コストとは、外部支払だけでなく、社員人件費や配賦される本社費なども含む(厳密には、当該部門への直接サービス提供のための、他部門の活動コストも含めることが望ましい)。業務の標準化/外部化/集中化、社員が担う/社外者に任せるなど、取り得た手段の選択結果を、コスト効率の形で見ることができる。
さらに、業務水準を定義するのに適当な指標を選ぶことにより、業務の過程においてもマネジメントが可能となる。BSC*1 による管理指標の設定はよく知られているが、そのほかにもSCC*2 が提唱するSCOR*3 メトリクスの中から選定するのも一案である。

管理可能状態を維持することの本質は、あるべき姿を写し取る基準をあらかじめ設定し、その基準と現状との比較業務をルール化することである。一般的には、問題が発生してから後追いで検証することが多いが、そうである限り普段は業務をとにかく流すだけの、マネジメント不在状態にあるとしかいえない。
そうではなく、参照基準をあらかじめ決めておくことで、あるべき姿を常に意識したマネジメントが行われることこそが、「本来のあるべき姿」の実現であると筆者は考える。


*1 BSC:Balanced Score Card
*2 SCC:Supply Chain Council
*3 SCOR:Supply Chain Operations Reference model

(「プラントエンジニア」2005/2月号(日本プラントメンテナンス協会)寄稿文より)


関連商品:ビジネスモデル開発研修プログラム
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STE02.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048023/

困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html

コンサルティングのお問い合わせ先
bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください

【theme : 経営コンサルタント
【genre : ビジネス

ビジネスモデルを起点に考えるプロセス改革 その3

売れる・儲かるビジネスプロセスを設計する

前回はビジネスモデルの4つの観点(誰に、何を、どのように届けるか、どのように儲けるか)を用いて、事業改革の方向性を検討する方法について考えた。今回は、その中でも重要な『どのように届けるか』『どのように儲けるか』の実装方法について考えていきたい。


■顧客価値の届け方をデザインする

まず、次の3 つの段階を踏むことで、正しい価値提供プロセスをデザインする必要がある

・第1段階:顧客へ価値が届いている状態から遡っていき、その状態をつくるために必要な役割を洗い出す
・第2段階:プレーヤー(役割を果たす者)を決める
・第3段階:プレーヤーを最短経路(もっとも合理的なインターフェース)でつなぐ

下表は、一般的な工業製品やサービスを届けるために必要な役割の一覧である。

価値の生成および提供に必要な役割

もう、おわかりだと思うが、必要な役割から論理的に考えていくと、1ヵ所ですべての役割をまかなうことができるならば、「組織とは本来必要のないもの」なのである。実際にはさまざまな理由により、複数のプレーヤー=組織が参加するが、その過程は最短プロセスに冗長性を意図的に入れ込んでいることそのものである。だからこそ、プレーヤーの選定やその数には十分な吟味がされなければならない。
この方法は、顧客を起点とした、きわめて合理的なプロセス設計が行えるが、自社も含めたプレーヤーの代替が効きやすいため、容易に他者に代わられてしまう。そこで、競合の参入や模倣を阻み、自社の役割を最大化した中で、収益を確実に上げるメカニズムを、設計したプロセスの中へつくり込むことが必要となる。


■売れる・儲けるメカニズムの実装

よく知られているように、利益とは売上とコストの差である。儲けを増やすには、「売上を増やす」「コストを減らす」のいずれかしかない。
継続して儲かっている事業には、必ず合理的なメカニズムがあり、これを最大化する仕組みを持っている。

(1) 売上を増やす方法

顧客と認知価値が変わらないとして、合理的に売上を上げるには、差別化戦略とロックイン戦略がきちんと存在することが重要である。

①差別化戦略
差別化戦略には、製品によるものとプロセスによるものがある。まったくの新市場・新製品の場合は、製品機能そのものが差別化要素となる。しかし、成熟した今日の市場では、基本機能よりは付加的機能での差別化を狙うものが多い。訴求方法の巧拙はあるにせよ、いまどき製品機能による差別化だけでは難しいため、次に考えるのがプロセスによる差別化である。「顧客の目的達成に大幅に貢献する」の『大幅に』を支援するのである。パソコン販売におけるDellモデルはよく知られた例であり、一流ホテルのコンシュルジュサービスもこの領域である。ただし、Dellにせよ一流ホテルにせよ、しっかりした製品機能があるからこそのプロセスであり、プロセスだけでの差別化はあり得ない。これも、われわれがかつて「ビジネスモデル特許」騒動で学習した教訓である。

②ロックイン戦略
差別化要素そのものに加えて、これを強化するうえでロックイン=顧客の囲い込みを意図する必要がある。結果的に模倣障壁として働く要素はいくつか知られているが、売り手が自らコントロールできる要素には、i)契約または法規制、ii)販売独占権、iii)ブランドの3 つしかない。i)の典型的な例はリース契約である。ii)は、この商品を買うには独占権を持つ所からしか買えない場合である。ここまで来ると、「こんなの当たり前じゃないか」と思う読者もおられるかもしれないが、製品においては何が差別化要素として働いているのか、どの機能がどのように顧客へ訴求して売れているのか、果たして明確に説明できるだろうか。ロックインを意識して、業務プロセスを設計できているだろうか。


(2) コストを減らす方法

これも、よく知られた5つの戦略がある。やはり、結果的にできているという場合は多いが、戦略を明確に意識してプロセスを設計しているだろうか。意識するとしないでは、プロセスの維持強化やそのタイミングにおいて、明確な差となって現れる。

①規模の経済
量をまとめることにより、QCDすべてを改善する方法である。量のまとめ方にも「モノをまとめる」「業務をまとめる」の2通りがあり、それぞれモジュール化や標準化の活動へ必然的につながる。
 
②範囲の経済
同じ仕様を使い回す方法である。習熟効果による品質安定はもちろん、うまくまとめられるならば、規模の経済へも持ち込むことができる。たとえば今、中国は発電所の建設ラッシュだが、以前に設計した発電プラントとほぼ同じ仕様を横展開して、開発速度を加速している。

③速度の経済
単なるリードタイムの短縮にとどまらず、資金の投下から回収までの回転率向上による効果を得る方法全般である。典型的なのは、先に対価を得てからモノをつくり始めるやり方で、これもDellモデルが有名である。

④外部化の経済
同じ業務を行うのに、外部へ出すことで総コストを下げる方法である。かつては安価な賃率だけを理由に、工場を海外移転する向きがあったが、最近は管理コストや物流コスト、リスク費用などを含めて評価した結果、国内での生産を選んだ例も多い。なお、標準化が疎かなままで外部化すると、すぐに管理不能となって、結局はコスト高につくことに留意すべきである。
 
⑤集中化の経済
業務を集約することで管理コストを下げる方法であり、コールセンターや受注センターなどが典型例である。外部化に同じく、これも標準化とセットで行われるべきである。


(「プラントエンジニア」2005/1月号(日本プラントメンテナンス協会)寄稿文より)


関連商品:ビジネスモデル開発研修プログラム
弊社HP掲載:http://www.jbc-con.co.jp/consul_service/pdf/STE02.pdf
イプロス掲載:http://www.ipros.jp/products/141048023/

困ったときはここ!「 ビジネス解決の玉手箱」
http://www.jbc-con.co.jp/consulting/index.html

コンサルティングのお問い合わせ先
bca@jbc-con.co.jp にお気軽にお問い合わせください

【theme : 経営コンサルタント
【genre : ビジネス

訪問者
プロフィール

日本ビジネスクリエイト

Author:日本ビジネスクリエイト
経営改革、業務改革、現場改革、システム実現支援などの総合的なコンサルティングを提供しています。特に製造業の現場に精通したコンサルティングに強みを持ち、SCM/CVM領域でのパイオニアとして認知され、また公益事業向けコンサルティングにおいても実績があります。

経営コンサルティング企業として、日本におけるSCM改革をリーディングしております。
また最近では、「X-Chain Mangement(エックスチェーンマネジメント)」という新しい経営手法を開発して、お客様の事業の成功に貢献しております。

【ホームページ】: http://www.jbc-con.co.jp/

メールでお問い合わせ

名前:
メール:
件名:
本文:

公式メルマガ
メルマガ登録・解除
 

『経営に役立つ
「現場レポート!」』

を購読しませんか?
E-mail

めろんぱん

メルマガ登録・解除
経営に役立つ「現場レポート!」
 
 powered by メルマガスタンドmelma! トップページへ

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
コンテンツページ
日本ビジネスクリエイトは日本初のAPICSの認定教育機関(AEP)
apics

弊社は、以下のページでも記事を掲載しています。

●フジサンケイビジネスアイでの連載記事

書籍案内
カレンダー
06 | 2009/07 | 08
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
検索フォーム
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

リンク
カテゴリ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード